研究課題/領域番号 |
11J11122
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 温熱療法 / 筋萎縮 / 機械的人工換気モデル / 横隔膜 / 細胞内シグナル伝達 / タンパク質合成・分解 |
研究概要 |
これまで、骨格筋萎縮に関する研究では、抗重力筋である遅筋に焦点が当てられ、そのメカニズムについてはここ数年で急速に解明されてきた。それに伴い遅筋であるヒラメ筋の萎縮に対する熱ストレス負荷の抑制効果が多くの研究で示されつつあるものの、速筋の萎縮に対する効果については不明な点が多い。近年、機械的人工換気(Mechanical Ventilation;MV)モデルでは、速筋優位の横隔膜が僅か12時間という短い時間で急激に萎縮することが報告されている。本年度は、速筋線維優位の骨格筋である横隔膜の萎縮に着目し、熱ストレス負荷がラットのMVに誘発される横隔膜の萎縮の抑制に効果的であるか否かを明らかにすることを目的とした。実験動物には3ヶ月齢のWistar系雄性ラットを用い、対照(CT)群、12時間のMV群または熱ストレス負荷+MV(HM)群に群分けした。HM群は12時間のMVの24時間前にラットを41℃で60分間の暑熱環境に曝露した。12時間のMV後速やかに横隔膜を摘出し、生化学的な分析を行った。その結果、12時間のMVは先行研究と同様に筋の張力を15%程度低下させたが、筋機能の抑制に熱ストレス負荷の効果は見られなかった。しかし、カスパーゼ3および7の活性化に代表されるアポトーシスは、MV群では有意に増加したが、熱ストレス負荷によりその活性化は抑制される傾向が認められた。これは、MV前の一過性の熱ストレス負荷は、MV誘発性のアポトーシスを抑制し、横隔膜の萎縮抑制に効果的に働く可能性を示唆している。今後は熱ストレス負荷がMV誘発性の筋萎縮時のシグナル伝達応答に及ぼす影響について、更に長時間のMVや異なった熱ストレス負荷条件の観点から研究を進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災やそれに伴う緊急の財源確保により、多少の影響は受けたものの、実験自体はおおむね順調に進展している。まだ検討すべき点は残されているものの、本年度の研究の目的としては達成することができたのではないかと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は熱ストレス負荷の温度条件について検討を行う予定であったが、いくつかの分析項目の結果から熱ストレス負荷の一過性の影響が残っている可能性が見られたため、今後は熱ストレス負荷のタイミングや回数に着目し、一過性の影響が見られない条件での検討が必要であると考えられる。また、機械的人工間を行う時間を延長することにより、更に大きな横隔膜の萎縮が引き起こされるという報告から、18時間あるいは24時間といった長時間のMVにおける熱ストレス負荷の効果についても検討を行う必要があるかもしれない。
|