研究課題/領域番号 |
11J11150
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
細川 正人 静岡県立静岡がんセンター(研究所), 新規薬剤開発・評価研究部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 循環腫瘍細胞 / 血液 / がん |
研究概要 |
本研究では、細胞の機械的強度や流動性などの物理的特性に基づいて、がん患者血液から循環腫瘍細胞(CTC)を分離・検出するセルクロマトグラフィー技術を開発することを目的としている。また、回収したCTCの二次解析から、CTCの量的評価のみならず質的評価についても検討することを目指している。 本年度は、このセルクロマトグラフィーデバイスの開発とCTCの高感度検出のための基礎検討を行った。これまでの研究からセルクロマトグラフィーデバイスの基本設計は終えていたが、実際のがん患者血液等を利用した試験は実施していなかった。そこで、静岡がんセンターにて臨床試験を開始し、肺がん患者血液を対象とした測定法の最適化を進めた。本年度で目的症例数の解析を終えることができたが、その結果、セルクロマトグラフィーデバイスは従来の抗原抗体反応に基づくCTC回収法よりも優れた回収性能を有している事が示唆された。また、回収した細胞が腫瘍細胞であることを細胞診により確認するために、セルクロマトグラフィーデバイスに回収した細胞を病理組織診断用の染色法(メイグリュンワルドギムザ染色)によって染色し、病理診断医の協力の元、観察及び評価を実施した。この結果、臨床検体から回収した細胞が腫瘍細胞の形態特徴(核の異型性、凝集塊の形成など)を有していることが確認された。これらのことから、本研究で開発したセルクロマトグラフィーデバイスにより転移性がん患者血液から高効率にCTCを回収できることが示された。次年度以降は、回収した細胞の2次的解析による細胞の質的評価および、CTC数と患者予後の相関性評価などを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度内に、セルクロマトグラフィーデバイスの仕様を検討し、臨床検体を対象とした試験を実施することを当初の目的とした。期間内に目標の症例数の解析を達成することができ、本手法の有効性を実証するデータを蓄積することができたため、今後の応用研究もスムーズに進める事が出来ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに、CTC回収に要する手法の検討をほぼ達成することができ、回収性能を実証できた。今後は本手法が、様々な癌種に対応できることを示しつつ、CTCの2次的解析を推進する。その際、少量の細胞からがん遺伝子の発現や変異を同定・定量する手法が求められる。これまでは、CTCを分離するための装置開発に取り組んできたが、次年度以降は分子生物学的アプローチを用いて細胞内の微量な遺伝子発現を捉える手法の開発が最重要開発項目であると考えており、これに注力する。
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