セルクロマトグラフィーによる循環腫瘍細胞の量的・質的評価法の開発

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11J11150
• 研究機関: 静岡県立静岡がんセンター(研究所)
• 研究代表者: 細川 正人 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員PD
• キーワード: 循環腫瘍細胞 / 血液 / がん

研究概要

本研究では、細胞の機械的強度や流動性などの物理的特性に基づいて、がん患者血液から循環腫瘍細胞(CTC)を分離・検出するセルクロマトグラフィー技術を開発することを目的とした。また、回収したCTCの二次解析から、CTCの量的評価のみならず質的評価についても検討することを目指した。
第2年度までに、セルクロマトグラフィーデバイスの開発とCTCの高感度検出のための基礎検討を行い、静岡がんセンターにて臨床検体を対象とした試験を行った。この結果、本デバイスは従来の抗原抗体反応に基づくCTC回収法よりも優れた回収性能を有している事が実証された。本成果を元に、本年度は回収した細胞の遺伝子変異解析による細胞の質的評価を検討した。
具体的には、単一細胞からの全ゲノム増幅法を用いた特定遺伝子の変異検出のためのプロトコルを検討した。肺癌細胞株をモデルとしてEGFR遺伝子などの変異の検出系を立ち上げた。はじめに、増幅バイアスを低減させた全ゲノム増幅反応条件を検討した。PCRや次世代シーケンサーを用いた解析により、上記遺伝子の変異の検出可否を指標として評価を進め、モデル癌細胞から単一細胞レベルで塩基欠失や増幅等の変異を検出可能であることを確認した。また、CTCの純度は目的の遺伝子の変異検出の精度に関わるため、CTCの回収純度を向上させるアプローチについても平行して改良を進めた。前年度までの検討に加えて、再度フィルター構造の検討を進めたことと、回収プロセスを自動化した装置を開発したことにより、CTC回収の再現性が向上した。以上、3年間の研究実施により、臨床試験を始めCTC回収に関わる諸検討を実施し、得られた結果を元に技術向上のためのフィードバックをかけて本手法の精度向上を実現することができた。また、単一細胞からの遺伝子変異検出にかかる基本プロトコルの構築をすすめ、CTCの量的・質的な判定につなげる基礎技術を確立することができた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、セルクロマトグラフィーデバイスに回収した細胞の遺伝子変異解析による細胞の質的評価法を検討した。この結果、単一細胞からの遺伝子変異検出にかかる基本プロトコルが構築でき、CTCの量的・質的な判定につなげる基礎技術を確立することができた。

今後の研究の推進方策

(抄録なし)

研究成果

• [雑誌論文] Microcavity Array System for Size-Based Enrichment of Circu lating Tumor Cells from the Blood of Patients with Small-Cell Lung Cancer (2013)
  • 著者名/発表者名: Masahito Hosokawa, Takayuki Yoshikawa, Ryo Negishi, Tomoko Yoshino, Yasuhiro Koh, Hirotsugu Kenmotsu, Tateaki Naito, Toshiaki Takahashi, Nobuyuki Yamamoto, Yoshihito Kikuhara, Hisashige Kanbara, Tsuyoshi Tanaka, Ken Yamaguchi. Tadashi Matsunaga
  • 雑誌名: Analytical Chemistry 巻: 85 ページ: 5692-5698
  • DOI: 10.1021/ac400167x
  • 査読あり
• [雑誌論文] Size-Based Isolation of Circulating Tumor Cells in Lung Cancer Patients Using a Microcavity Array System (2013)
  • 著者名/発表者名: Masahito Hosokawa, Hirotsugu Kenmotsu, Yasuhiro Koh, Tomoko Yoshino, Takayuki Yoshikawa, Tateaki Naito, Toshiaki Takahashi, Haruyasu Murakami, Yukiko Nakamura, Asuka Tsuya, Takehito Shukuya, Akira Ono, Hiroaki Akamatsu, Reiko Watanabe, Sachiyo Ono, Keita Mori, Hisashige Kanbara, Ken Yamaguchi, Tsuyoshi Tanaka, Tadashi Matsunaga, Nobuyuki Yamamoto
  • 雑誌名: PLoS ONE 巻: 8 ページ: e67466
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0067466
  • 査読あり
• [学会発表] Microcavity array方式による血中循環腫瘍細胞自動回収装置の開発 (2014)
  • 著者名/発表者名: 根岸諒、細川正人、中村清太、上原寿茂、田中剛、松永是、吉野知子
  • 学会等名: 電気化学会第81回大会
  • 発表場所: 関西大学
  • 年月日: 2014-03-29
• [学会発表] High-density microcavity array for rare cell detection and single-cell analysis (2013)
  • 著者名/発表者名: Masahito Hosokawa
  • 学会等名: The 9^<th> International Forum on Post-Genome Technologies
  • 発表場所: Shenzhen Virtual University Park (中華人民共和国)
  • 年月日: 2013-11-07
  • 招待講演
• [学会発表] Microcavity array技術に基づく血中循環がん細胞自動回収装置の開発 (2013)
  • 著者名/発表者名: 根岸 諒、細川正人、中村清太、上原 寿茂、田 中剛、松永 是、吉野 知子
  • 学会等名: 第65回日本生物工学会大会
  • 発表場所: 広島国際会議場
  • 年月日: 2013-09-19
• [学会発表] Microcavity Array System For Size-Based Enrichment of Circulating Tumor Cells from Small Cell Lung Cancer Patients (2013)
  • 著者名/発表者名: Ryo Negishi, Masahito Hosokawa, Takayuki Yoshikawa, Yasuhiro Koh, Hirotsugu Kenmotsu, Tateaki Naito, Toshiaki Takahashi, Nobuyuki Yamamoto, Yoshihito Kikuhara, Hisashige Kanbara, Tsuyoshi Tanaka, Ken Yamaguchi, Tadashi Matsunaga, Tomoko Yoshino
  • 学会等名: Frontiers of Single Cell Analysis
  • 発表場所: Stanford University (米国)
  • 年月日: 2013-09-06