研究概要 |
自然免疫が生体防御能の中心であるエビ類において自然免疫機能で特に重要である殺菌・殺ウイルス能をもつフリーラジカルである活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)は特に重要である。そこで、RNSの一種である一酸化窒素を合成する一酸化窒素合成酵素(NOS)およびROS生成酵素群に関する研究を行った。本研究ではエビ類における生体防御と生命維持などの統合的な生体制御機構をフリーラジカル生成酵素群の側面から明らかにし、早期疾病診断へ応用することを目的とした。 平成23年度はフリーラジカル生成酵素群の遺伝子同定、各種解析を行う計画であり、クルマエビのNOSのmRNAのバリアントおよび、ROSの1種であるスーパーオキシドを生成するNADPHオキシダーゼ(Nox)の同定に成功した。『8th Symposium on Diseasesin Asian Aquaculture-DAA VIII』にてNOSに関する研究成果を発表した際に、Poster Award(受賞課題:「Molecular cloning, mRNA variants and ability of NO generation of the Nitric Oxide Synthase Gene, MjNOS, in Kuruma Shrimp Marsupenaeus japonicus」)を受賞した。 クルマエビのNoxについて、分子系統解析において昆虫のNoxおよび脊椎動物のNox5とクラスターを形成した。発現解析において、リンパ様器官および血球でNox遺伝子の高い発現が確認された。血球をVibrio penaeicidaの死菌で刺激すると、刺激後4時間において遺伝子発現が対照区の7倍に増加し、その後低下した。以上より、クルマエビNox遺伝子は昆虫およびヒトのNox5に近縁であり、生体防御に関与する可能性が示唆された。
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