研究概要 |
エビ養殖において、高密度飼育によるエビの感染防御能力の低下等により、ウイルス病や細菌感染症を主とした疾病が世界各地で発生している。本研究では、エビ類における生体防御と生命維持などの統合的な生体制御機構をフリーラジカル生成酵素群の側面から明らかにし、これらの遺伝子を早期疾病診断へ応用することを目的とした。 平成25年度はROS生成酵素であるキサンチン酸化還元酵素(xanthineogxidoreductase : XOR)の遺伝子の同定、各種解析、およびを初年度から同定された各遺伝子の組織局在性の特定および、各遺伝子の有効利用法の探索を行う計画であった。クルマエビのXDH遺伝子の全長は4,328bp、推定1,362アミノ酸残基、推定アミノ酸分子量は、150kDaであった。分子系統解析において節足動物のXDHとクラスターを形成した。アミノ酸配列を用いた相同性解析において、ゼブラフィッシュと56.5%、ヒトと54.2%、キイロショウジョウバエと53.1%の相同性を示した。ドメイン解析において、XDHの特徴的なドメインは生物間においてよく保存されていた。平常時のクルマエビの各臓器における発現解析において、クルマエビのXDHは中腸腺および脳において高い発現を示した。またin vivoの感染実験において、クルマエビ急性ウイルス血症原因ウイルス(penaeid rod-shaped DNA virus : PRDV) 108時間以降に、鰓においてクルマエビのXDHの遺伝子発現が低下傾向を示した。 本研究期間において同定、機能解析が進められたフリーラジカル生成遺伝子群(NOS, Nox, DuoxおよびXDH)のうち、NoxおよびDuoxがPRDV感染時に有意に高い発現を示すことから、疾病診断、特にPRDV感染時の遺伝子マーカーの候補に選定した。
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