研究課題/領域番号 |
11J11187
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研究機関 | 公益財団法人朝日生命成人病研究所 |
研究代表者 |
坂本 啓 公益財団法人朝日生命成人病研究所, 消化器内科, 特別研究員(PD)
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キーワード | IKKβ / ATM / DNA damage / NF-κB |
研究概要 |
消化器癌の化学療法は、分子標的薬を始めとした様々な薬剤が使用されるが、その多くは5-FU等のようなDNA損傷を引き起こす薬剤を併用する。一方、DNA損傷は制御因子IKK複合体の活性化を通してNF-κBを活性化することが報告されており、DNA損傷によるIKK/NF-κB活性化の癌細胞における意義を解析することとした。細胞のDNA損傷応答において、ATMは重要な役割を果たす因子であり、DNA損傷時のIKK/NF-κBの活性化にも関連することが知られている。そこで、ATM/IKK/NF-κBの生理的役割について観察した。 DNA損傷の種類としてはアルキル化について解析することとした。アルキル化を引き起こす抗癌剤は複数あるが、刺激を強力にするため、アルキル化剤は抗癌剤ではなく、主にMNUを使用した。ATMをsiRNAによりノックダウンしたところ、アルキル化剤によるDNA損傷の修復が抑制された。また、IKK複合体の主要因子であるIKKβをノックダウンしたところ、DNA修復が抑制された。そこで、IKKβをノックダウンした状態でのアルキル化損傷後のATMのリン酸化状態を観察すると、ATMのリン酸化(s1981)が刺激後6-9時間後にはコントロールに比べて減弱していることが判明した。IKKβによる被リン酸化部位を既報プログラムを用いて検索したところ、ATMのs1981も候補として挙がり、in vitroキナーゼアッセイにおいてもIKKβによるATMのリン酸化が観察された。更には、アルキル化刺激に応答してIKKβが核内に移行する現象も観察された。IKKβの核内移行を阻害したところ、ATMのリン酸化及びDNA修復が抑制された。これらの結果から、IKKβが細胞のDNA損傷応答時に、直接ATMを活性化しDNA修復を促す経路の存在が示唆され、抗癌剤耐性の一因である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とはやや違う方向ではあるが、抗癌剤耐性に関するNF-κB関連因子の新規的な役割の解明に至っている。また、結果報告として学会発表まで漕ぎ着けており、着実に進行している。一方で、実験動物の疾患等で、予想外の遅れを蒙ったこともあり、完全に順調に進行できたとは言えないため、評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
動物の疾患については、動物を一掃したうえで清掃し、再度やり直す。 動物が準備できるまで、癌細胞株や臨床検体等をもちいた解析が主となるため、それらの材料でできる限りのデータを採取しておく。
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