研究課題/領域番号 |
11J11195
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 忠快 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ABCA1 / ユビキチン / Atherosclerosis / ESCRT |
研究概要 |
本研究では、ABCA1の細胞膜上でのユビキチン化を制御しているユビキチンリガーゼの同定が目標となる。 最終的に相互作用タンパク質を野生型と網羅的に比較することを念頭に置き、ABCA1の細胞膜上ユビキチン化に重要なドメインの探索、およびその変異体作製を行った。結果、ABCA1のUb-Lysosome分解経路での分解に重要なドメインの同定に成功した。次にGSTプルダウンを行うことを念頭に置き、本変異体の変異部分を含むGST融合タンパク質の作製を試みたが、これに難航したため、免疫沈降による相互作用タンパク質精製を行う目的でFLAGタグを融合した野生型・変異型ABCA1発現ベクターの構築をした。 同時に、新たなハイスループットスクリーニング系の立ち上げに着手した。細胞外ドメインにHAタグを挿入したAECA1発現ベクターを用いて細胞膜上ABCA1を特異的に標識した後、蛍光性物質により定量するELISAの手法を採用し、本系を最適化していった結果、最終的に96ウェルスケールで適用可能であり、かつバックグラウンドが2%程度の高感度な系の構築に成功した。以前用いていた系とは異なり、放射標識体を使用しない系であるため、ランニングコストが安価であり、また扱いが簡便である点も特筆すべきと考えている。 細胞膜タンパク質のユビキチン化を担うことが既知であるユビキチンリガーゼはそれほど多く報告されておらず、せいぜい数十遺伝子程度(全体の10%程度)と認識している。そこで上記に加え、ユビキチンリガーゼを過剰発現させ、細胞膜上ABCA1のユビキチン化に対する作用を直接的に評価するアプローチによる探索に着手した。細胞膜タンパク質に対するユビキチン化能を有するユビキチンリガーゼに着目し、これらの発現ベクターを様々な研究室から供与していただき、または自身で作製し、20遺伝子程度の発現ベクターを用意した。これら発現ベクターの過剰発現が与えるABCAIの細胞膜上ユビキチン化に対する影響をスクリーニングした結果、数回の施行の後に、4つの候補遺伝子まで絞り込むことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画で用いる予定であったスクリーニング系が使用困難な状況に陥り、アプローチの変更をする必要が出てきた。前々年度発案の相互作用タンパク質の網羅的スクリーニングに加え、前年度は新たに二つのスクリーニング系の立ち上げ、及びその施行に費やした結果、候補遺伝子を4つにまで絞り込むことには成功したものの、未だ目的とするユビキチンリガーゼの同定には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
LC/MS/MSを用いて免疫沈降産物を解析することで相互作用タンパク質の網羅的探索を行う。作製した発現ベクターを用いての免疫沈降が可能なことは確認済みであるが、今後はまずその条件を最適化する予定である。 前年度までに簡便なハイスループット系の確立に成功した。しかしながら本系で使用する細胞外ドメインにタグを融合したABCA1発現ベクターは、現状では一過性に過剰発現させなければならず、ランニングコストが上昇してしまう。そこでまずは安定発現細胞の構築を行い、その後に本系とsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングを遂行する予定である。 発現ベクターを用いた直接的なユビキチンリガーゼ探索アプローチにより絞り込んだ4遺伝子に関して、siRNAを用いたノックダウンスタディを中心に、これらがABCA1の細胞膜上ユビキチン化に関与しているか否かの検討を遂行中である。
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