近年の電子機器動作周波数の高周波化とともに問題が顕著化しているEMI(Electromagnetic Interference:電子回路などから放射される不要な電磁波(電磁ノイズ)による機器の誤作動や無線通信障害)問題の解決に有用な電磁ノイズ可視化装置を開発した。開発した装置では、電磁波を吸収して発熱する幕(電磁波吸収幕)の温度分布を、赤外線カメラで観測することにより、電磁界強度分布を温度分布として可視化できる。さらに、この装置では、独自の画像処理技術(2次元ロックインアンプ処理)により、数mK程度の微小な温度変化も観測可能である。平成23年度の研究実施計画では、「(1)幕の温度変化から電界・磁界強度への校正」、「(2)回路基板近傍の電磁界強度分布測定」、「(3)実用機器近傍の電磁ノイズ可視化」の3つの目標を掲げた。これに対して、(1)においては、これまで、電界強度に応じて発熱する電磁波吸収幕が用いられていたが、今回、これと合わせて、磁界強度に応じて発熱する幕も用意し、それぞれの幕を用いた測定を行うことで、電界/磁界を区別した強度分布観測を可能とし、さらに、2.45GHzにおいて、それぞれの電磁波吸収幕に電磁波が照射されたときの、電界/磁界強度と幕温度変化量の関係を調査した。これにより、電磁波吸収幕を用いた本測定手法において、初めて電磁化強度の定量的評価を可能にした。(2)においては、試作した高周波伝送線路(マイクロストリップライン)や、ノイズ対策部品が実装された回路近傍の電磁界強度分布を調査した。観測分布の空間分解能はこれまでの測定法に比べ大きく向上し、信号線の定在波により生じる電磁界や、実装部品近傍の局所的に強度の高い電磁界分布を観測することに成功した。(3)においては、市販のAC-DC変換器近傍の電磁界分布測定を行い、変換器の回路近傍に形成される電磁界を3次元的に可視化することに成功した。
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