研究概要 |
我々は既に樹立されている正常患者由来iPS細胞を心筋へ分化誘導し、表現型の解析を進めた。分化プロトコールは浮遊培養系を用い、浮遊培養開始から4日目まではWnt3aを作用させ、以降はWnt3aを除き浮遊培養を継続した。同様の分化の培養系がES細胞、レトロウイルスで作製した線維芽細胞由来iPS細胞で拍動胚様体を出現させることを確認した。それらの細胞と同様に、センダイウイルスで作成したT細胞由来iPS細胞の分化において、浮遊培養開始後10-15日目頃より拍動する胚様体が出現することを確認した。我々はさらにこのようにして得られた拍動する胚様体の解析を進めた。これらの胚様体内には機能的な心筋細胞が存在し、RNAレベルで心筋特異的マーカー(GATA4、Mef2c、ANP、αMHC、βMHC、MLC2a、MLC2v、MYH6、cTNNI)を発現していること、タンパクレベルでも同様に心筋特異的マーカー(Actinin、Nkx2.5、TroponinI、ANP)が発現していることをRTPCR,免疫染色で確認した。また、これら拍動する胚様体をin-vitro多点電位記録システムであるMEAシステムのマルチ電極アレーディッシュに乗せると、1~2日で接着し、底面の電極で活動電位を記録することができた。この実験系を用いて各種抗不整脈薬(Na,Ca,Kチャネルブロッカー)に対する心筋細胞の応答性を解析した。T細胞由来の心筋細胞は遺伝子再構成を内包するため、その影響が危惧されたが、各種チャネルブロッカーに生理的な反応を示すことを確認した。今後の更なる臨床へ向けた研究の発展を目標とし、研究を進める。
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