研究課題/領域番号 |
11J40009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 如江 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(RPD)
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キーワード | スフィンゴモナス属細菌 / フラジェリン / ペプチドグリカン |
研究概要 |
スフィンゴモナス属細菌A1株のフラジェリンホモログ(P5、P5'、P6)およびFlgJ(ペプチドグリカン分解活性を持ち、べん毛基部体形成に必須)に焦点を当て、フラジェリンの発現・分泌機構を分子生物学と構造生物学の観点から解析し、以下の知見を得た。 (1)べん毛非形成性であるA1野生株と、昨年度に育種した極単べん毛形成性A1-M5株について、マイクロアレイ解析を行ったところ、A1-M5株において、べん毛関連遺伝子群と走化性関連遺伝子群の大幅な発現上昇が認められた。A1株にはべん毛関連遺伝子群が2セット(セットAとセットB)存在するが、A1-M5株において、どちらの遺伝子群も高発現していた。 複数のフラジェリンが如何にして一本のべん毛を形成しているかを明らかにするため、抗p5抗体を用いた免疫電子顕微鏡解析を行った。その結果、(1)多くのべん毛で、菌体近くを除き、全体的にp5が存在すること、(2)まったくp5が存在しないべん毛があること、が明らかとなった。これより、A1-M5株には2種類の極単べん毛が存在していることが示唆される。 (2)FlgJは、べん毛基部体の構築に関与するN末端ドメインとペプチドグリカン分解活性をもつC末端ドメインから成る。これまでにA1株の2種類のFlgJ(SPH1045、SPH1797)のうち、SPH1045のC末端ドメイン(SPH1045C)の機能解析と構造解析を進めてきたが、SPH1797に関する解析は遅れていた。そこで今回、N末端とC末端の両ドメインを含むSPH1787ful1の発現・精製系を確立し、抗体を作成した。精製したSPH1797fullは溶菌活性を示したが、その強さはSPH1045Cのそれと比較して1/50程度であった。FlgJのN末端ドメインの構造を明らかにするために、SPH1797fullの結晶化を試みたが、今のところ結晶は得られていない。 SPH1045Cに関しては、昨年度作成した変異体を用いてX線結晶構造解析を進め、阻害剤との複合体構造を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定の3項目(1)べん毛関連遺伝子の発現プロファイル解析、(2)FlgJの生理機能解析、(3)FlgJのX線結晶構造解析)のうち、(1)については計画通り研究が進捗し、良好な結果を得た。(2)については、FlgJの発現・精製法の確立と抗体作成まで進んでおり、現在免疫染色による発現部位の同定を行っている。(3)については、SPH1045Cと阻害剤との複合体構造が解けたが、SPH1797fullの結晶が得られていない。このような状況から、全体的にはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
FlgJのN末端ドメインは、べん毛基部体のキャップタンパク質と推定されているが、機能・構造の解析が遅れているため、引き続き、FlgJの結晶構造解析と機能解析を行う。A1株が2種類のべん毛を如何にして発現制御しているのか、どのように組み合わせ、あるいは、使い分けているのかを明らかにするため、p6の局在性を免疫電顕により明らかにする。また、A1-M5株とAl野生株の遺伝子比較を行うことにより、べん毛関連遺伝子の発現調節因子の解明を目指す。
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