研究概要 |
骨格筋は生体最大のエネルギー消費器官であり、そのエネルギー代謝調節、特に脂肪代謝調節機構の解明が肥満解消に最も重要であると考えられる。脂肪酸の正味消費量は、酸化分解とトリグリセリド合成(脂肪合成),の収支で決まるため、合成経路の理解は不可欠であるが、「脂肪合成」の調節機構はほとんど分かっていない。代謝機序の全体像を理解するためには、酸化・合成の両面から作用機序を調べる必要がある。本研究では骨格筋の「脂肪合成・蓄積能力」に焦点を当て、筋線維タイプの差異に応じた脂肪酸取込・脂肪合成活性・蓄積能の差異、また、脂肪合成・蓄積においてキーとなるタンパク質を明らかにすることを目的とする。 初年度では、筋線維タイプ(1,2A,2X,2B型)を分類・明視する実験系構築のため、各筋線維タイプのミオシン重鎖アイソフォームを識別するラットモノクローナル抗体をそれぞれ作製した。各々の抗体上清を用いて、マウス骨格筋横断切片(soleus、plantaris、gastrocnemiusを含む)の免疫組織染色を行ったところ、各ミオシン重鎖アイソフォーム特異的な染色像が得られた。この結果は、作製した抗体が筋線維タイプを正確に識別していることを示している。現在、筋線維タイプを明視するため、各精製抗体と標識キットを用いた条件検討を行っている。また、並行して、筋内脂肪量を評価するための予備実験を行った。単離直後の筋線維をNile redおよびBODIPY493/503にて染色し、脂肪滴の染色および存在を確認した。さらに、マウス骨格筋線維を生体外で培養するため、培養条件の最適化を試みた。その結果、細胞外マトリクス分解酵素は、単独で使用するよりも複数の酵素を組み合わせることでその効果が飛躍的に高まり、生存率の向上につながることを見出した.
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