研究課題
本研究の目的は、マーモセット脊髄半切モデルにおいて、新生軸索の伸展を阻害するセマフォリン3Aの選択的阻害剤の治療効果を確認するとともに、運動機能が回復した個体について脊髄内での軸索走行の変化を多角的に解析することである。電気生理的に一次運動野の上肢及び下肢の制御領域を同定し、同定した箇所に神経トレーサーを注入し皮質脊髄路を可視化する形態学的手法と、実験殺段階で延髄に電気刺激を行い脊髄における刺激応答を計測し、投射神経の分析を電気生理学的に行う手法を用いた。24年度は健常マーモセットにおける皮質脊髄路神経の投射パターンの解析を終え論文投稿を行った。これは脊髄損傷モデルとの比較において基礎データとなる。さらに第4/5頚髄半切モデルマーモセットでは、健常マーモセットと同様に神経トレーサーを用いた定量解析や電気生理学的に脊髄損傷後の可塑的な神経投射の変化を捉える為の実験を行い、同時に自然回復(無治療群)過程の運動機能評価を行い機能回復に寄与したであろう軸索の可塑的変化を追跡した。これらのデータは論文投稿レベルに揃った段階である。当初の年次計画通り25年度に着手する薬剤治療群のモデル作製を行い、自然回復群と同様の解析を行っている段階である。昨年度までにほぼ完成させた運動機能の回復を詳細に評価出来るシステムであるMIKYテスト、高速ビデオカメラによる把持動作の追跡、垂直ラダーテスト及び歩行キネマティクスを用いて、自然回復群と薬剤投与群の運動機能評価を行った。薬剤モデルにおける運動機能回復は自然回復群と比較して優位ではなかった。軸索伸長薬剤に期待される斑痕部を超える新生神経を捉える事が出来なかった。薬剤治療だけでは治療効果が低い事が分かった。リハビリテーションとの併用に期待している。
2: おおむね順調に進展している
健常群、自然回復群ともに電気生理学的及び形態学的な解析を終える事が出来た。軸索伸展阻害因子セマフォリン3Aの阻害剤を脊髄半切患部へと投与する薬剤投与モデルにおいては、運動機能の改善という点で顕著な薬理効果が見られなかった。半切手術のブレによる影響を考え、モデル作製方法をいくつか検討した為、当年度内に薬剤モデルにおける定量解析を終える事が出来なかった。
自然回復モデルで確立した運動機能評価システムを用いて、次に薬剤治療とリハビリテーションの併用療法群を設ける。リハビリテーションの方法は、これまでもいくつか試作を行ったが未完成な状態であり、どのようなバッテリーが上肢及び下肢の機能回復に有効であるか、時間をかけて検討する必要がある。薬剤治療群での組織学的定量解析を完結し、それらのデータと比較を行う。研究最終年度は、健常群、自然回復群、薬剤投与群及び併用群の保存サンプルを同一条件下で免疫染色し、損傷中心部及びその吻側尾側での分子的変動を確認する。
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PLoS ONE
巻: (印刷中)
Journal of comparative Neurology
Jornal of Neurophysiology
巻: 109 ページ: 2853-2865
10.1152/jn.00814.2012.Epub2013Mar20.