研究課題/領域番号 |
11J40085
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
韓 松伊 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 核内受容体 / 脂質代謝 / 転写 |
研究概要 |
平成23年度には核内受容体ER-LXRのタンパク質の解析を重点的に行った。また、ER-LXRクロストークにより制御可能な化合物の探索とその機能解析を行った。さらに研究実施計画には含まれていなかった個体の解析としてマウスを用いた実験を行い、野生型及び遺伝子欠損マウスを用いた脂質代謝及び分子解析の実験を行った。 (1)ER-LXRクロストーク分子機構の解析 ER-LXRクロストークの分子基盤を探るために、ER-LXRのタンパク質間相互作用及び、ER-LXRクロストークにより制御可能なプロモーターの解析を行った。 1)ER-LXRに相互作用する共役転写因子群の同定・解析2)ER-LXR複合体が作用する標的遺伝子の網羅的解析 ER-LXRクロストークの共役転写因子としてco-activatorsのp300,SRC1を見出した。これらは既存の核内受容体の共役因子として知られているが、今回様々な共役因子を試した結果ER-LXRクロストークにも作用していることが明らかになった。ER-LXRクロストークの網羅的解析のためマウス肝臓を用いたmicroarrayの結果、特異的遺伝子にのみER-LXRクロストークが作用することが明らかになった。特異的な遺伝子に働くさらなる分子メカニズムの解析が今後の課題とされた。 (2)ER-LXRクロストークによる新規化合物の探索 1)in vitroスクリーニング2)得られた化合物の評価 In silicoでERに結合することが予測された511化合物を用いてスクリーニングを行い、ER-LXRクロストークにより制御される植物性化合物を同定することができた。この化合物をマウスに投与するとLXRによる脂質蓄積を抑制することが示された。化合物はER-LXRクロストーク機構を介してマウス肝臓での脂質代謝を制御していることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核内受容体クロストークによる脂質代謝メカニズムを解明するためにマウス肝臓を用いた分子解析を行った点、さらに遺伝子欠損マウスを用いてメカニズムを解析した点が評価できると考えられる。分子メカニズムは試験管内や細胞株レベルでの解析が多い中、個体を用いて解析することにより生理的意義とも結びつけると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は予定されている3年間の研究推進期間中で順調に研究が進んでいる。次年度の計画は当初の予定通り(1)ER-LXRクロストーク分子機構の解析の持続及び、(2)ER-LXRクロストークによる新規化合物の機能解析を進める。ER-LXRクロストークが特殊な遺伝子に限られていることが明らかになったため、他の遺伝子との差別化メカニズムについての研究が必要とされる。新規化合物に関しては個体までの評価がある程度進んでいるが、やはり遺伝子間の差別化があるためメカニズム研究を進めていく必要がある。
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