研究概要 |
【mRNA切断後に翻訳されるCGSタンパク質の動態】 メチオニン処理によりCGSを翻訳中のリボソームの停止が起こった際,新生ペプチドの切断が起こると考えた場合,翻訳再開後に合成されるCGSタンパク質は,N末端が欠損していると考えられる.本年度(第2年目)は,このN末端欠損CGSが,葉緑体への移行能をもっているかどうかを調べるため,CGSがもつ葉緑体移行シグナル領域の決定を行った.また,一般的に,葉緑体移行後にシグナル配列は切断されることから,CGSにおける葉緑体移行シグナル切断箇所の決定も行った. CGS1第1エキソン内には,メチオニン代謝産物に応答して翻訳停止・mRNA切断を引き起こすために必要な領域(MTO1領域)が存在する.MTO1領域と,葉緑体移行に必要なシグナル配列の関係を調べた結果,MTO1領域の直前の配列が,葉緑体移行に重要な役割をもつことが明らかとなった.さらに,葉緑体移行後に切断される箇所が,MTO1領域直後であることが示された.現在,これらの結果を論文としてまとめているところである. 【CGS1 mRNA切断後のmRNAの細胞内局在】 昨年度,λファージのNペプチド認識配列を用いたmRNA可視化の実験系を用い,CGS1 Exon1 mRNAの細胞内局在の可視化を試みたところ,顆粒状の構造体が観察できた.そこで本年度は,この顆粒状の構造体とP-bodyとの関連性を解析するため,P-bodyに局在することが知られる脱キャップ酵素(DCP1,DCP2)およびエキソリボヌクレアーゼ(XRN4)のクローニングを行った.これらにmCherry蛍光タンパク質を融合し,一過的発現系を用いて細胞内局在解析を行ったところ,P-bodyと思われる顆粒状の構造体への局在は,DCP1-mCherryでのみ観察された.次に,CGS1 Exon1 mRNAの局在解析で見られた顆粒状構造体がP-bodyであるかどうか調べるため,DCP1-mCherryとCGS1 Exon1 mRNAの共局在解析を行った結果,CGS1 Exon1 mRNAが示す顆粒状構造体の一部が,DCP1-mCherryの局在と一致することが分かった.今後,メチオニンに応答したCGS1 Exon1 mRNAのP-bodyへの局在について,詳細な解析を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CGSの葉緑体局在に必要な領域を決定し,論文投稿準備に入っていること,また当初3年目に行う予定であった,P-bodyマーカータンパク質とCGS mRNAとの共局在解析も開始していることから,おおむね順調に進展しているものと考える
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であることから,CGSの葉緑体移行とメチオニンに応答したCGS発現制御の関係について考察した論文の執筆に努める.また,CGS mRNAの局在について,メチオニンに応答した局在変化の有無およびP-bodyなどmRNA分解構造体との関連性を解析し,CGS発現制御におけるmRNAの動態について積極的に解析を行う予定である.
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