研究概要 |
本研究は,「脂質酸化能の低下が肥満につながる」という仮説を解明するため,脂質酸化能に対する食事と運動の相互作用について,食事摂取状況を統制した条件下でヒューマンカロリメーターを用い,24時間のエネルギー代謝量や脂質酸化量をモニタリングして,安静時や運動後にエネルギー基質がどのように選択されるかを検証することを目的としている.本年度は2つの予備試験を実施し,その後,食事摂取状況を統制した条件下で脂質酸化能に対する食事と運動の影響を検討した. 予備試験1は,低強度の身体活動を評価できる3軸加速度計を身体のどの部位に装着すれば,ヒューマンカロリメーター内での自由活動をより正確に評価できるのかを検討した.その結果,腰部に加速度計を装着し,個人ごとに合成加速度からエネルギー消費量を推定する式を作成することで,より正確に評価できることが示唆された.(学会発表) 予備試験2は,エネルギー収支を一致させた条件下で1日のエネルギー必要量を3食均等に摂取した場合にどのような脂質酸化能を示すのか,健康な成人男女を対象にして検討した.その結果,呼吸商や脂質酸化量に男女差は認められず,成人男女の除脂肪量あたりの脂質酸化能に違いがないことが示唆された.また,除脂肪量あたりの脂質酸化能において,食事摂取のタイミングで違いがあることが分かった。今後の試験では食後の脂質酸化能を検証する際に,食事のタイミングに注意する必要があることが分かった. 本試験として,エネルギーバランスを統制した状況下で高脂肪食を摂取した後に長時間・連続的な運動を行った場合,脂質酸化能がどのように変化するのかをヒューマンカロリメーターを用いて検討した.本試験では,まず,基本的データを取るために健康な成人男性(女性ホルモンの分泌量が低い健康な成人を想定)を対象として実施した.その結果,高脂肪食摂取後には脂質酸化量が増えることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒューマンカロリメーターを用いた測定は,被験者を長時間にわたって拘束し,基質に関する検討を行う際には,エネルギーバランスや提供する食事・運動などによって,測定結果が大きな影響を受ける.そのため,事前の予備的な検討が非常に重要である.また、実際に得られた結果は,当施設のヒューマンカロリメーターの場合,3秒毎にデータが得られるため,24時間で大量のデータが蓄積される.今年度は,本測定に向けて,いくつかの予備的な検討を実施し,得られた莫大な時系列データを丁寧に解析していく作業に時間をかけた.そのため,今年度の成果はそれほど多くはないものの,次年度以降の本格的な検討を実施するための準備を周到に行った.
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