魚類の腹ビレの形成位置は、進化が進むにつれ、体幹部前方(頭側)に移動する傾向にある。申請者は、腹ビレの形成位置の多様性をもたらした要因として、ヒレの筋肉を構成する筋前駆細胞に着目し、腹ビレの筋肉を生きたまま観察できるトランスジェニックゼブラフィッシュを用いて、腹ビレの筋肉を形成するまでの筋前駆細胞の挙動を明らかにすることを試みた。 VISTAブラウザにより、魚類のゲノム上の領域の比較解析を行い、種間で保存された非コード配列(conserved non-coding element:CNE)を抽出した。各CNEとミニマムプロモーターにEGFPのcDNA配列をつないだコンストラクトを作製し、ゼブラフィッシュ受精卵に顕微注入したところ、腹ビレの筋肉形成に関わる筋前駆細胞でEGFPを発現するトランスジェニックフィッシュを得ることができた。完成したトランスジェニックゼブラフィッシュを用い、腹ビレの筋肉形成過程を解析したが、腹ビレの筋前駆細胞の挙動を詳細に観察することは難しく、CNE領域以外に腹ビレの筋前駆細胞での遺伝子発現をコントロールするゲノム上の領域があることが示唆された。そこで、大腸菌人工染色体BAC(Bacterial Artificia lChromosome)を用いた、BACトランスジェニックゼブラフィッシュの作製を試みた。腹ビレの筋肉形成に関わる遺伝子のコード領域を含むBACクローンを同定し、大腸菌内での遺伝子組換えにより、目的遺伝子内にEGFPのcDNA配列を挿入した組換え体を得ることで、腹ビレの筋前駆細胞でEGFPを発現させることができる。BACトランスジェニックゼブラフィッシュを用いた詳細な解析により、腹ビレの筋肉形成過程を解明していきたい。
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