研究課題/領域番号 |
11J40229
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
石井 梨恵子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員RPD
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キーワード | 幾何学的フラストレーション / 二次元三角格子反強磁性体 / 単結晶育成 |
研究概要 |
〈研究成果の内容〉 大型単結晶を必要とする中性子非弾性散乱実験に向けて,スピン大きさ、9=5/2をもつハイゼンベルグ型擬二次元三角格子反強磁性体Rb_4Mn(MoO_4)_3の単結晶の育成に励んだ.これまで行ってきたフラックス法に加え、フローティングゾーン法での単結晶育成を行った。この物質の吸水性の問題が残っており、現在まだ育成条件を探している段階ではあるが、作業の迅速化や効率化を図ることにより、今後より大きな単結晶の育成に期待が持てる。現在は、Rb_4Mn(MoO_4)_3における2.4Kと2.8Kでの逐次相転移でのスピン構造を調べる為にアメリカのNISTで行った、1×1×0.5mm^3という非常に小さな単結晶試料についての中性子弾性散乱実験の結果について解析を行っている。磁気転移が観測される3K以下で散乱強度の立ち上がりが見られる。しかしながら、逐次相転移点での特異な変化は観測できなかった。また面間の相互作用は反強磁性的な相関が働いていることがわかった。現在これらの研究成果をまとめた論文を執筆中である。 <研究意義,重要性> Rb_4Mn(MoO_4)_3は低温まで正確な三角格子を形成する、擬二次元三角格子反強磁性体の典型物質と言える。中性子散乱実験を行うことから、逐次相転移点付近でのスピン構造や磁気構造の変化について詳細に調べることは、この系における普遍的な性質を解明する上で重要である。また、Rb_4Mn(MoO_4)_3の様な不純物などの乱れのないクリーンな物質を開発し、これらを比較することも今後重要になってくると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も中性子散乱実験を行うことを目標に、大型単結晶の育成に励んだ。これまでのフラックス法に加え、フローティングゾーン法を用いた単結晶育成も行っているが、物質の吸水性がある為に苦戦している。この他、鉄系超伝導体BaFe2(As,P)2における中性子小角散乱実験やKFe25e2における中性子非弾性散乱実験を行い、中性子散乱実験の実験技術や解析方法などを習得した。これらの研究成果について、学会などで積極的に発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初、中性子散乱実験を行う予定であった日本原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3は東日本大震災の影響でまだ再稼働の見込みが立っていない。従って、J-PARKや海外の研究施設(オークリッジ国立研究所(USA),ILL(フランス),PSI(スイス))などの他の実験施設での中性子実験を考えている。また今年度は、これまでの研究成果をまとめ、論文として発表する予定であり、現在執筆中である。また、新しい幾何学的フラストレート磁性体の物質探索を積極的に行い、新しい量子状態や物理現象の発見に努める。このほか、研究の視野を広げる為、鉄系超伝導体や空間反転対称性の破れた超伝導体などの金属物質にも興味をもち、その中性子散乱実験を行う予定である。
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