研究課題
無傷の植物では、頂芽が優先的に成長し腋芽の成長は抑制されている。腋芽の休眠過程に関わる遺伝子群を単離・同定することにより、腋芽の「休眠への移行段階」において遺伝子レベルで何が起きているかを明らかにしようとした。本特別研究員による平成23年度以前の解析により、休眠過程の腋芽特異的に発現する遺伝子PsAD4が同定されていた。そこで、平成23年度ではPsAD4遺伝子の機能解析を行った。<1>PsAD4遺伝子の系統樹解析の結果、アスコルビン酸生合成の最終段階を触媒する酵素と相同性が高かった。そこで、アスコルビン酸量と腋芽の休眠・成長段階との相関関係について調べた。その結果、PsAD4遺伝子はアスコルビン酸の生合成には関わっていないことが推測された。<2>様々な条件検討を行いながらPsAD4遺伝子の発現を抑制したエンドウの作出を試みた。<3>エンドウPsAD4遺伝子の相同遺伝子はシロイヌナズナでは7つあることがわかった。そこで、7つの遺伝子のそれぞれが破壊されたシロイヌナズナを入手し表現型を観察したところ、目立った表現型は観察されなかった。<4>エンドウPsAD4遺伝子の相同遺伝子はイネでは3つであることがわかった。そこで、3つの遺伝子のそれぞれが破壊されたイネの種を入手した。一方、イネlax panicle2(lax2変異株は、腋芽の形成に異常が見られ、腋芽の数が減少する表現型を示す。これまでに、lax1変異株が報告されており、lax2はlax1と表現型が類似していた。lax2変異株の原因遺伝子の単離の結果、LAX2遺伝子は新規な核タンパク質をコードしていた。酵母two-hybrid assay、及びin vitro binding assayにより、LAX2タンパク質はLAX1タンパク質と直接相互作用することが明らかになった。これらの結果から、LAX2タンパク質はLAX1タンパク質と共に働き、腋芽の形成に関わっていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の年次計画にほぼ従った研究の進み具合であることと、本研究成果の一部を査読付き学術雑誌に発表することができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
平成23年度では、本研究代表者により既に得られていた腋芽の休眠過程に関与するPsAD4遺伝子の機能解析を行った。平成24年度では、PsAD4遺伝子以外の腋芽の休眠過程に関与する新奇な遺伝子の単離・同定を行う予定である。研究課題申請書に記載した研究計画では、subtracted cDNAライブラリー法により候補遺伝子群を単離する予定であった。しかしその後、他の研究者との意見交換や学術雑誌に掲載されている情報から、マイクロアレイ法の方が得られる結果がより高度なものになることが期待できた。そこで、平成24年度では、マイクロアレイ法により、候補遺伝子の単離を行う。なお、方法を変更しても試薬代や研究時間などはほどんど変更ない。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The Plant Cell
巻: 23 ページ: 3276-3287