発生や腫瘍の進展において、膜輸送機序が細胞運動を制御する分子機構については明らかになっていない。本研究の目的は細胞運動に重要なアクチン結合分子Girdinとその結合タンパク質ダイナミンに関する研究を基軸として、エンドサイトーシスとアクチン細胞骨格の協調による細胞運動の制御機構を解明することである。平成24年度は以下の点について明らかにした。 (1)Girdinとダイナミン分子の生化学的結合様式の解明 これまでにGirdinのN末端ドメインがダイナミンと結合することを明らかにしている。今年度はN末端ドメインをさらに細分化したコンストラクトを複数作成し、N末端ドメインの中間3分の1にあたる領域がダイナミン結合の責任領域であることを免疫沈降法によって明らかにした。 (2)Girdinがダイナミン分子の機能(GTPase活性)に与える影響の生化学的検討 前年度までにGirdinのN末端ドメインがダイナミンのGTPase活性を上昇させることを明らかにした。今年度は上記活性に重要なアミノ酸残基を同定するために、N末端ドメインの様々な点変異体および欠失変異体を作成し、それぞれの精製蛋白質を大腸菌発現システムにより発現・精製した(本研究は聖マリアンナ医科大学微生物学教室三好洋博士との共同研究である)。 (3)エンドサイトーシスにおけるGirdinとダイナミン分子の結合の重要性 これまでにGirdinの発現をRNA干渉法で抑制すると、HeLa細胞におけるトランスフェリン受容体のエンドサイトーシスが障害されることを明らかにした。今年度は他の膜分子のエンドサイトーシスについてもGiridnの発現抑制の影響を検討した。その結果、インテグリンやEGF受容体の取り込みは抑制しないものの、E-カドヘリンの取り込みは優位に抑制することが明らかとなった。以上の結果はGirdinがダイナミンの活性制御を通して膜分子(カーゴ)特異的なエンドサイトーシスを制御している可能性を示唆するものである.
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