研究課題/領域番号 |
11J56423
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 哲也 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | p18/LAMTOR1 / マクロファージ / 活性化 / 細胞表面分子 / リソソーム |
研究概要 |
マクロファージ特異的にp18(別名LAMTOR1)を欠失するコンディショナルノックアウトマウスを用いて、個体レベルでのp18の働きを検討した。個体レベルでの解析における重要な成果は以下の2点である。 1.p18欠失マクロファージが種々の末梢臓器に集積することを確認した。2.生体内におけるマクロファージの活性化のうち、Classical activationは保たれているが、Alternative activationが起こらないことが示された。これらの結果は、p18コンディショナルノックアウトマウスにおいて敗血症モデルおよび腹膜炎モデルを適用すること、またp18欠損細胞がGFP陽性となるマウスを用いて示された。 また、免疫系の形成について骨髄・脾臓・胸腺・リンパ節・末梢血などをフローサイトメトリーにより解析し野生型と比較したが、免疫細胞それぞれの割合に特記すべき変化を認めなかった。すなわち免疫系の形成はほぼ正常に行われており、マクロファージの機能にのみ異常を来していることが示された。 細胞レベルの解析として、上記2におけるAlternative activationを司どる因子であるCD124について検討したところ、p18欠失マクロファージにおいて細胞表面のCD124が野生型に比して減少していることが判明した。Alternative activationを起こすためにはIL-4およびIL-13の刺激をマクロファージが受け取ることが必須であるが、CD124はこれら2つのサイトカイン受容体に共通するサブユニットである。このためIL-4,IL-13のシグナルがマクロファージに入らないことが、Alternative activationを起こさない原因の一つであると考えられた。 さらにp18欠損マクロファージを透過型電子顕微鏡で観察したところ、リソソームが著明に増加していた。また大腸菌死菌を貪食させて電顕で観察したところ、野生型と異なり大腸菌の消化が極めて遅いことが判明した。すなわちリソソームの機能に異常があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マクロファージの活性化異常につき、説得力の高い劇的なデータが得られた。またその分子メカニズムについても再現性のあるデータが得られている。電子顕微鏡での観察では一目瞭然のクリアカットな結果が得られており、現在研究中の分子p18が、自然免疫制御において極めて重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
リソソームの機能異常と、マクロファージにおける表面分子の分布異常に関連があるという作業仮説に基づき、現在実験をすすめている。p18が関与する重要なシグナル経路はこれまで3つ報告されているため、それらのシグナルと、リソソームの異常、また細胞レベルでの活性化異常を統合的に説明できるよう研究を進める予定である。すなわち、p18の細胞内における根源的な働きを解明し、それがマクロファージ特異的な機能についてどのようにかかわっているのかを解明したいと考えている。
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