研究概要 |
物質探索・超伝導・メタ磁性を切り口として量子臨界点近傍における物理現象の研究を行なってきた。以下、その成果をそれぞれ示す。 ○物質探索 Ce化合物に対してYb化合物では4f電子の磁性を媒介とした超伝導の例がほとんどない。そこで、圧力誘起超伝導体CePd_5Al_2や超伝導体NpPd_5Al_2と同じ結晶構造を持つYbPd_5Al_2の単結晶育成を行なった。電気抵抗・磁化率・比熱測定から、小さな電子の有効質量をもったネール温度T_N=0.19Kの量子臨界点から離れた反強磁性体であることがわかった。 ○超伝導 結晶構造に反転中心がないことで反対称スピン軌道相互作用が働き、フェルミ面が分裂し、特異な超伝導が発現すると理論的に言われている。Ce系では空間反転対称性のないことを反映した超伝導が見られているがLa化合物では少ない。超伝導体LaNiC_2では三重項状態なのか通常のBCS超伝導なのか議論が分かれているが、全て多結晶体での実験であった。今回、純良な単結晶を育成し超伝導とフェルミ面に関しての研究を行った。低温の比熱が指数関数で表せ、BCS型の超伝導体であることがわかり、ドハースファンアルフェン効果の実験より、反対称性スピン軌道相互作用で分裂した回転楕円体・双曲面的なフェルミ面を観測した。 ○メタ磁性 重い電子系化合物YbT_2Zn_<20>(T:Co,Rh,Ir)において磁化率に極大をもつ温度T_<χmax>以下で重い電子系特有のメタ磁性がメタ磁性転移磁場H_mで観測してきた。そこでH_mとT_<χmax>、の間の簡単な関係式を得、UT_2Zn_<20>(T:Co,Ir)においても同様のメタ磁性を観測した。 また、典型的な重い電子系化合物であるCeCu_6のメタ磁性の圧力効果について研究を行なった。加圧によりCeCu_6の電子状態は重い電子系から連続的に価数揺動系に移行する。その中間的な領域で磁場を印加することにより価数のゆらぎの臨界点が誘起されるという理論がある。そこで加圧下での磁場中電気抵抗測定を行なった。常圧ではH_mでA値が肩をもが加圧とともにピーク構造になり、2.00GPaの圧力下で最も顕著になることが分かった。
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