研究課題/領域番号 |
11J57012
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
立花 優 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 旧ソ連地域研究 / 比較政治 / 政治体制論 / 政党研究 |
研究概要 |
当執筆者は、旧ソ連地域において現出した政治体制の事例研究としてアゼルバイジャンを取り上げ、政治・経済の側面から多角的・実証的に検証することで、その安定性の要因を解明することを研究目的とし、当該年度に実施した研究について、次のような成果を得た。 1、2010年国民議会選挙の事例分析に関して、日本中央アジア学会研究ワークショップにて報告し、論文(「2010年アゼルバイジャン国民議会選挙」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』947号、pp.40-49、2011年)を発表した。これは、旧ソ連地域の権威主義的な体制における政権政党の活動について、豊富な情報をもとに実証的に議論したものであり、従来当然視されていたような上意下達の静的な選挙ではなく、多様な利害表出が見られることを指摘するものであった。 2、民族紛争の結果生じた避難民問題の取り組みに関する考察を北海道中央ユーラシア研究会にて報告した。これは、発生と停戦から相当程度時間が経過した紛争において、紛争の結果生じた国内避難民がどのように処遇されているのかについて焦点を当てたものである。これにより、アゼルバイジャン政府が近年、国内避難民の再定住化に力を入れていることが明らかとなり、近い将来に大幅な妥協を伴うような和平実現の可能性は低いことを示した。 3、利益分配のメカニズムに関して、独立後に形成が進んだ巨大ビジネスグループと有力大臣との関係について情報収集し、分析を試みた。この考察は初期段階であるが、派閥形成や有力エリート間の勢力争いにおいて、これまで論じられてこなかった新たな因果関係が存在する可能性を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当執筆者が掲げた研究目的を達成するために設定した個々の分析は、1、2010年議会選挙の事例分析、2、大統領令に関する計量分析、3、利益分配メカニズムの解明、4、行政エリートの任免データ作成・分析、5、民族紛争と国内政治との関係、の5点であるが、このうち1と3と5についてはそれぞれ研究を進めることができた。一方、2と4については、継続的なデータ収集を行っているものの、具体的な分析については作業が完成しておらず、具体的な成果をあげるに至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
当執筆者が研究課題として設定した上記5項目の分析のうち、本年度の優先課題は2と4である。データの収集・分析方法については既に方針を決定しているため、この課題達成に必要なものとしては、データで示される特徴を裏付けるような一次・二次資料の発言・論説の分析である。これと、昨年度で一定の進捗をみた1、3、5の内容をさらに精緻化して組み合わせ、本年度中に博士論文を完成させることが最終の目標となる。
|