研究概要 |
ヒトとサルのみに感染するポリオウイルスの強毒マホニー株は、ゲノムRNAの塩基番号928がAからGに変化(カプシド蛋白質VP4のアミノ酸番号62がIleからMetへ変化)すると、マウス脊髄の神経細胞表面分子をレセプターとして認識し、マウス脊髄に適応した変異株となることを既に報告した(Jia et al.,1999)。この変異株から復帰変異株を得、そのゲノムを解析した。その結果、サプレッサー変異株は、VP1のアミノ酸番号107がValからLeu,VP2のアミノ酸番号33がValからIle、またはVP3のアミノ酸番号231がIleからThrへと変化した変異株であった。これらのアミノ酸残基は、ウイルス粒子立体構造上では表面近くであったり、内部に位置していたり、VP4の変異点近くであったりと様々な位置に存在していた。これらのサプレッサー変異により、本来のポリオウイルスレセプター(PVR)のみを認識するようになることから、PVRの認識に働くキャニオンの構造は、60コピーずつの4種類のカプシド蛋白質全体により形成されるウイルス粒子構造に影響を受けていることが示された。 PVRとして働く分子は2種類(PVRαとPVRδ)知られている。これら分子の極性細胞における局在性を検討したところ、異なる局在性を示した。ポリオウイルスのエンドサイトーシスにはPVRδがより強く関与していることを示唆した。 神経細胞SK-N-SHを使用し、ポリオウイルスによる神経病原性を解析した。他の培養細胞(HeLa細胞など)とは異なり、SK-N-SH細胞のポリオウイルスによる細胞変性効果は、2回目の感染後に現われることが明らかとなった。
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