研究課題/領域番号 |
12002009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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研究分担者 |
田中 正之 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80280775)
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (70237139)
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キーワード | チンパンジー / 道具使用 / 認知発達 / 参与観察研究 / 観察学習 / 子育て支援 / 親子関係 |
研究概要 |
チンパンジーの3組の母子を対象にして、チンパンジーの母親が育てているチンパンジーの子どもの認知発達を縦断的に研究した。京都大学霊長類研究所に暮らす1群14個体が対象で、そこには1歳から37歳までの3世代がいる。この3人の子どもは、いずれも2000年に生まれたもので、出生直後からほぼ毎日の研究を続けている。平成13年度は、ちょうど彼らが1歳から2歳に到るまで、認知機能の発達的変化をみたことになる。本研究は、「チンパンジーの母親と子どもと人間の研究者」という3者が一体となったもので、いわば「参与観察研究」というところに特色がある。チンパンジーの母親の助けを借りて、チンパンジーの子どもの育つようすを至近距離から毎日・毎晩、観察・記録・検査してきた。とくに道具的知性についてめざましい進展があった。生後10か月ころに始まった定位的操作が、その後いったん消えて、1歳後半になって再度出現した。これはそのまま道具使用に移行した。細い棒を使って小さな穴の向こうにあるハチミツをなめ取ったり、紙を使って水を飲んだりする。いずれも、野生チンパンジーがおこなう「あり釣り」や「葉を使った水のみ」を髣髴とさせる行動だ。こうした学習において、親の世代がすることを子どもはじっと見続ける。また、親の世代の使い残した物を使用する。したがって親と同じ素材を使った道具使用をするようになるということがわかった。そうした技術の継承の基盤として、親密な親子関係がある。3人の子どもは2歳になってもまだ離乳しない。さらには子育てを支援するネットワークがある。子どもが1歳になるころから、伯母、父親、母親の友人などが母親のかわりに子どもを抱くようになり子育てに参加することがわかった。こうした研究と平行して、野生チンパンジーやオランウータン、テナガザル、人間の障害児などで比較研究を進めた。
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