研究概要 |
本研究では脳磁場を指標とした聴覚野における語音処理を検討した。まず、(I)日本人被験者もフィンランド人被験者と同様に語音に対して左優位な聴覚野の反応を示すが、右の聴覚野よりも後方の活動が認められる被験者がいる(Koyama et al.,2000,Cognitive Brain Res)、(II)子音に続く母音の持続時間の脳磁場におよぼす影響から子音が外国語である場合には後続母音によるマスキングが生じることを示唆する結果を得た(Koyama et al.,2000.NeuroReport)。さらに、日本語にはない語音である/l//r/の語音聞き分け学習トレーニングを若年成人16名(右手利き)を対象に行った。被験者にラップトップパーソナルコンピュータを貸与し約3週間〜5週間かけて、45セッション(1セッション、約30分)のトレーニングを行った。トレーニング前の聞き分け率は54-68%で、トレーニング後の聞き分け率64-93%であった。トレーニング効果の認められた被験者では、左の聴覚野起源の脳磁場反応の増大(5名)あるいは反応潜時の短縮(3名)が認められたが、右の聴覚野には被験者間で一貫したトレーニングによる脳磁場反応の変化は認められなかった。また、トレーニングの効果が認めれられなかった被験者には脳磁場の変化は認められなかった。以上により、語音聞き分けトレーニングによる学習には左の聴覚野が関与することが示唆された。
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