研究概要 |
本研究は,土地改革・緑の革命などによる農村社会の変容過程と非農業部門の成長の両視点から農村労働者の就業構造と賃金率の変動の分析を行い,農村労働市場の構造変化を解明し,「経済改革」が弱者層に及ぼした影響を検討しようとするものである. 土地保有,農業生産や州別GDPデータ,ならびに雇用失業調査および家計調査の個票データ(1983・1993年,10万世帯におよぶ詳細・大量データ)を入手,整理した.農業労働賃金データはデータベース化した. 本研究から得た知見は以下のとおりである.土地保有の零細化により自家農業従事と賃雇用が減退したが,緑の革命など農業成長による雇用拡大がそれを上回り,農業労働者の就業状態は改善した.農業常雇から臨時雇いへ(臨時化),また農業労働の女性化が進行した.農業労働者への分配は改善されたとはいえない.非農業就業は全体としては拡大しているが,小規模農村工業が雇用面において縮小した.若年労働力の就業構造の分析から,少なくとも農村部に留まった学卒者が非農業部門に大量に就職するには至っていないといえる.農村部における非農業就業は多様であるが,農業労働者やその子弟がアクセスできる業種・職種は限られており,世代間の職業移動も限られている.非農業就業は農閑期の就業状態改善には一定の役割を果たしたが,その他の時期における就業状態の改善は農業成長による.労働市場の統合分析の結果,産業間および地域間の波及効果は弱く,したがって非農業部門成長のトリックルダウン効果には限界がある.総合農村開発計画(IRDP),農村雇用計画(JRY)および公的配給制度(PDS)が外的ショック時における雇用の維持や物価騰貴抑制など一定の効果をもった.近年,経済改革下においてセーフティ・ネットとしてその改編が実施されている.
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