研究概要 |
完全に縮退した一粒子状態からなる極めて特異な量子的な物理系である量子ホール系での諸問題,空間反転や時間反転を破る凝縮系物理,超対称ゲージ理論、ニュートリノ振動,並びにブラックホール等について次の成果がえられた。 (1)整数量子ホール効果の量子化が縦抵抗が有限な値をとる時にも成立する新しい量子ホール領域が存在することが示された。 (2)量子ホール系での圧縮性ガス状態が、量子ホール系では運動エネルギーが相互作用から生ずるものであるため、負の圧縮率をもつ特異な状態であることが示された。さらに、この状態を流れる電流はトンネル効果により生ずるため特異な温度依存性、電流依存性を示す実験結果とも合致することがしめされた。 (3)非可換座標を持つ場の理論としての量子ホールガスの特異な性質が解明された。 (4)時間や空間の反転に対して不変でない超伝導では量子ホール系と同様に電磁場に対するChern-Simons項が導かれる。この際、磁場の代わりをp波のCooper対凝縮がし、またU(1)対称性が破れているためChern-Simons項の係数には補正があること等について解明された。 (5)場の理論に基ずいてニュートリノが中間状態にあるとするニュートリノ振動の新しい解析が行われた。 (6)ブラックホールの吸収係数に関する解析的な研究をおこない、ブラックホールからのさまざまなスピンを持つ粒子の波動関数を解析し、宇宙項のある場合のブラックホール解での波動関数は、宇宙項のない場合に比べて解析的性質が良くわかることを示した。
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