今年度は、最近の格子ゲージ理論におけるフェルミ粒子の扱いの大きな進歩を踏まえて、更に一般化した格子上のフェルミ演算子の可能性を考察した。最近のフェルミ演算子の研究はいわゆるGinsparg-Wilsonの関係式というものを用いて行われている。このGinsaprg-Wilsonの代数関係を一般化することは興味のあることである。藤川は負でない整数kにより特徴付けられたこの代数関係の一般化を指摘し、無限個のフェルミ粒子の演算子の可能性を示し、事実具体的にそのようなフェルミ演算子を構成してみせた。この演算子は整数kを0にするとノイバーガーのオバーラップ演算子に帰着する。一般にkを大きくすると演算子のカイラルな性質は連続理論に近づくが同時に演算子の局所性は損なわれる傾向がある。このように具体的に構成された演算子が一般論で期待されるような振る舞いをするのは興味深い。この新しく提案されたフェルミ演算子は、詳細な計算により正しいカイラル量子異常をだすことも藤川は確認した。また格子上での指数定理も正しく満たすことが示された。このフェルミ粒子の持つ種々の重要な性質について、藤川は研究分担者の山田と議論して理解を深めた。この演算子の局所性の研究は興味のあるものであるが、現在詳細な研究を進めており、近く結果を発表できる段階にある。結果は全ての非負の整数kにたいして、局所性を満たす演算子が定義されていることが示される。この演算子を用いたカイラルなゲージ理論の構成は興味のあるものであり、このような応用を含めてこの演算子の持つ可能性をさらに解明している段階である。
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