研究課題/領域番号 |
12019204
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米本 年邦 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40125688)
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研究分担者 |
北川 尚美 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00261503)
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キーワード | 植物細胞培養 / 有用物質生産 / 固定化 / in situ抽出 / アルギン酸カルシウム / β-カロチン |
研究概要 |
本研究では、従来法により細胞を固定化したアルギン酸カルシウムゲルの周囲を細胞を含まない同ゲルの薄層でコーティングするという二重層ゲルに包括固定化した植物細胞のリアクター培養において、特定の代謝産物をターゲティングとした抽出溶媒を添加することにより、代謝産物の高効率連続生産を可能とするプロセスを構築することを目的とする。今年度は、二重層ゲルに包括したタバコ細胞の固定化培養をフラスコおよびリアクタースケールで行い、フェノール類生産における本固定化法の有効性を検討すると共に、ニンジン細胞の懸濁培養系においてβ-カロチン生産に及ぼす抽出溶媒添加の影響を検討した。 タバコ細胞のフラスコスケールの固定化培養では、ゲル内の細胞増殖を抑制せずに培地中への細胞漏出を防ぐための適切なコーティング層厚さが存在することを示した。また、本固定化法によって、二次代謝物の一つであるフェノール類の総生産量、および細胞外生産量が共に著しく増加することを明らかにした。さらに、ドラフトチューブ付エアーリフト型リアクターを用いた固定化培養では、固定化により細胞が流体剪断力から保護されているため増殖を良好に維持できること、フェノールの総生産量および細胞外生産量がフラスコの場合と同様に大きく増加することを示した。一方、ニンジン細胞のフラスコスケールの懸濁培養では、抽出溶媒としてn-ヘキサデカンを添加することにより、細胞増殖およびβ-カロチン生産が共に促進されることを示した。また、この培養では、培地中に多くのカロチンがエマルションの形で放出されており、このカロチン粒子数は培養の経過に伴い増加していることが分かった。さらに、抽出溶媒と共に細胞壁透過促進剤であるジメチルスルホキシドを添加することにより、細胞外カロチン生産量を著しく増加させることができた。 以上の結果から、二重層ゲルに包括固定化した植物細胞を用いて抽出溶媒添加培養を行うことは、代謝産物の効率的な生産に極めて有効であると考えられる。
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