本研究の目的はセルラーゼ等のβ-グリカン結合領域の特質を理解し、さらには蛋白質工学的に改変してβ-グリカンとの結合を自由自在に制御することであり、これによってバイオターゲッティング素子などにに利用するための知見を得ることである。 糸状菌T.reeseiセルラーゼで唯一セルロース結合領域(CBD)を有しないEGIIIのN末端にCBHIのCBDおよびC末端にCBHIIのCBDをリンカーとともに結合させた2種のキメラ体を取得した。これらの結晶セルロースへの結合はnative EGIIIに比べ大幅に増加し、キメラ体のCBDが有効に機能することが明らかとなった。また、キメラEGIIIのリン酸膨潤セルロースや結晶セルロースなど不溶性基質に対する活性がnative EGIIIに比べ約1.5〜2.5倍に上昇した。動力学的な解析を行ったが、Kmだけではなくk_<cat>も増大していることが判明した。さらに、native EGIIIが協奏作用を示すCBHの共存下での結晶セルロース分解能力(協奏効果)を測定した結果、アビセル分解での協奏効果はnative EGIIIと変わらないのに対し、BMCC分解ではnative EGIIIの協奏効果(4.6倍)よりさらに増大し、最大で6.7倍となった。CBDの部位特異的変異は現在進行中である。 T.reesei由来の全長53kDaのα-L-アラビノフラノシダーゼ(AF53)のC末端約18kDa部分にこれまでに報告のない新規なXBDが含まれていることが明らかになっている。そこで、AF53のC末端側を約9kDaから27kDaまで欠失させた3種類の変異遺伝子を構築した。現在これらの変異遺伝子をS.pombeのシグナル改良型分泌発現系で発現させている。今後、XBD単独で機能することを確認するとともに、XBDとしての最小領域を確定させる予定である。
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