研究課題
半導体素子上に神経細胞を培養し、その軸索伸長を人工的に制御して神経回路を形成させる技術について研究を行う。そして将来は「神経インタフェース」や「バイオチッブ」の開発へと発展させる計画である。これまでITO(indium tin oxide)や白金など、生体適合性が比較的高いといわれる金属材料を用いて作製した微小電極アレイ上に神経細胞を培養し、その軸索誘導を試みてきた。しかし電極アレイ上に細胞を直接培養しようとすると、細胞が培養途中で死滅してしまうため、ポリリジンや細胞外マトリクス分子で電極アレイ表面をコーティングする必要があった。しかしコーティングはインピーダンスを増加させるため、細胞への電気刺激ならびに細胞からの電気記録には好ましくない。したがって生体組織との適合性および導電性の低下を同時に解決する必要がある。そこで我々は、導電性高分子の一つであるポリピロールを材料とすることにより、高い生体適合性と導電性を持つ電極アレイが作製できると考えた。そこで本年度は、ポリピロールのマイクロパターン作製と、培養細胞を用いた生体適合性の評価を行なった。パターン作製には、酸化重合剤の光反応性を利用したフォトリソグラフィを用いた。その結果、マスクパターンの露光時間やピロールの重合時間を最適に設定すれば、最小線幅3μmのポリピロールパターンを作製できることが判明した。またポリピロール上に細胞を培養した結果、培養細胞は突起を伸展して成長し4週間にわたって生存した。これらの結果より、電極アレイに適用可能な微小サイズまでポリピロールパターンを微小化できることが示された。またポリピロールは高い生体適合性を持つことが示された。
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