本研究では、乳酸菌Lactobacillus caseiの細胞接着に関わる糖鎖受容体タンパク質について、菌体内における所在を調べるとともに、本タンパク質の遺伝子を乳酸菌へセルフクローニングし、菌体表層に本タンパク質を多量に発現するようにデザインした組換え乳酸菌を取得することを試みた。 本タンパク質の遺伝子は本菌が持つプラスミドにも存在していることを見出した。菌体より抽出したプラスミドより得られた2.7kbHindIII断片に存在するORFがコードするタンパク質の一次構造は、既に見出しているゲノム断片の3.0kb EcoRI断片上のORFにコードされている本タンパク質の一次構造と100%の相同性を示した。両者は塩基配列が3塩基のみ異なるだけであった。プラスミドをキュアリングした株について、菌体表層タンパク質画分をSDS-PAGEで調べたところ、本タンパク質が発現していることより、本タンパク質の遺伝子はゲノムにコードされていると推測された。次に、本タンパク質の菌体内における所在を本タンパク質の抗体を用いて免疫電顕により調べた結果、主に菌体表層に存在することを確認した。そこで、糖鎖受容体タンパク質を発現していないLactobacillus属乳酸菌に本タンパク質の遺伝子を組み込み、本タンパク質を菌体表層に発現させて糖脂質への接着能を獲得したLactobacillus属乳酸菌の取得を試みた。即ち、本タンパク質の遺伝子を含むDNA断片をシャトルベクターpBE31に組み込み、得られたプラスミドpNK5をエレクトロポレーション法によって、本タンパク質を発現していないL.rhamnosusJCM2771に導入した。その結果、得られたL.rhamnosuspNK5/2771において、本タンパク質が発現していることをウエスタンブロッティング解析によって確認した。
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