酸化還元能のある共役系分子として、フラビン機能をもつ分子として6-アザフラビンを用い、水素結合を用いるレセプター分子としてグアニジニウムイオンを一個または二個もつメラミン誘導体を用いた。これらのレセプターはクロロホルムなどの有機溶媒中で6-アザフラビンを5点または7点の水素結合で強力に捕捉し、酸化還元電位を正にシフトさせ、酸化活性を向上させる。即ち、イソアロキサジン環N(1)-位への水素結合はN(5)-位を反応部位とする酸化反応を加速し、N(5)-位への水素結合はC(4a)-位への求核攻撃を含む反応を加速する。また、レセプター分子の水素結合を用いて、6-アザフラビンのアニオンラジカルを安定化できることをはじめて見い出した。その際、水素結合の数と水素ドナーの酸性度が重要な要素であることがわかった。この結果は酵素でみられるフラビンラジカルの安定化を考察する上で有用な知見である。会合定数、酸化還元電位を用いる熱力学的サイクルよりレセプター分子と6-アザフラビンのアニオンラジカルの会合定数を算出した。その会合定数は6-アザフラビンの酸化型との会合定数より10^3-10^5倍大きいことがわかった。一電子の出入りによって、水素結合による会合が劇的に変化する事実は新規な分子システム設計にとって有用な知見であると考えている。 酸化還元能を有する長い共役系分子としてイソアロキサジン環をベンゼン環を共有して連結したベンゾージプテリジン(BDP)の二電子還元型は分子内に見かけ上酸化型と還元型イソアロキサジン環を有するので、それ自身で酸素に安定な電荷移動錯体を形成するがその構造決定には至らなかった。
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