研究課題/領域番号 |
12020247
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
桑谷 善之 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00234625)
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研究分担者 |
吉田 正人 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (50137030)
伊与田 正彦 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50115995)
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キーワード | アヌレン / 非平面共役系分子 / フラーレン / 遷移金属触媒反応 / 銀錯体 / スチルベン / 芳香族化合物 / シス体 |
研究概要 |
フラーレン類の発見以来、曲面状共役系化合物が興味を集めている。これらの化合物は、曲面状の共役系に由来する得意な電子構造を持つことが予想されその性質には興味が持たれる。また、共役系の両側の面(凸面および凹面)での性質の違いに由来する様々な興味深い性質が、分子間相互作用が重要な要因となるような分子集合体や結晶状態などの性質に顕著に現れることが期待できる。この様な観点から代表者らは、ベルト状およびボウル状の非平面縮合多環状共役系炭化水素を設計し、合成することを計画した。分子設計の段階では、ひずみが全体に分散されることと、共役が全体に及ぶことを考慮し、かなり対称性の高い分子を目的化合物とした。 これらの分子にはかなりの歪みがあると予想されるので、比較的信頼性のある方法論によって目的物へと変換しうる様な適当な前駆体をまず合成して、そこからの変換を検討することとした。そこで我々はまず、cis-スチルベン誘導体のフェナントレンへの脱水素環化反応を利用したアプローチを考え、前駆体として比較的安定であると予想されるall-Z-環状オリゴスチルベン誘導体を設計し、遷移金属触媒反応などを効果的に利用することにより、選択的に合成することができた。ここで確立した合成法は、汎用性の高い反応を使用しており、目的化合物の誘導体化などの応用にも対応できるものと考えている。合成した前駆体については、X線結晶構造解析による分子構造や、NMRスペクトルの温度変化による分子運動などについて調べるとともに、遷移金属陽イオンとの錯形成や、光反応、脱水素反応などの化学反応性についても検討した。その結果、今回合成した化合物がかなり柔軟な構造をしており容易にコンホメーション変化を起こすこと、これにより誘起適合型で柔らかい陽イオンと錯形成を行うこと、目的とする非平面縮合多環状共役系への変換にはこの柔軟な骨格をもう少し固定化する必要があることを明らかにした。現在、この目的のために前駆体の構造に対する修正を加え、新たな前駆体の合成を検討している。
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