研究概要 |
色素分子間の会合や分子内クロモフォアーの会合を制御した新規なスクアリリウム系色素の開発を目的として、複素環部分を非対称成分とする近赤外吸収スクアリリウム色素の合成、フェロセン部位を架橋部とする新規なスクアリリウム系色素二量体の合成、π-共役系を拡張したビススクアリル系色素の合成を行い、溶液、結晶、LB中での分子内、分子間会合について検討した。以下の結果が得られている。 1.スクアリリウム系色素の分子間会合を制御するために、ジュウロリジン-ベンゾインドレニウム系スクアリリウム色素を合成した。この色素は、X線構造解析から色素内の1個のカルボニル基に対して1個の水分子が水素結合し、ベンゾインドリン骨格のN-ヘキシル基と色素平面で1種の疎水場を形成し、この空間にベンゼン誘導体を内包する新たな包接機能を有し、J-会合体様の分子会合体を形成することが明らかとなった。 2.フェロセン部位を架橋部に、分子末端にアザクラウン部位を有するスクアリリウム色素二量体を合成し、その金属塩添加による分子内会合特性について評価した。その結果、12-アザクラウン化や15-アザクラウン化スクアリリウム二量体は、アルカリ土類金属イオンと1:1の金属錯体を形成し、この構造は、分子内H-会合体であることを明らかにした。 3.π-共役系を拡張したビススクアリル系色素は、N,N-ジアルキルアニリノ-3-ヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオンとオルトギ酸エチルとの反応により合成した。このビススクアリル系色素では、中央の2個のカルボニル基間で分子内水素結合が形成され、π共役が拡張され、その結果、吸収波長は830nmまで長波長シフトした。なお、この水素結合に関与しているカルボニル基は遷移金属イオンと錯形成し、選択的な波長変化(634〜771nm)を示すことが判った。
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