最近、YやLaの薄膜は水素化-脱水素化によって可逆的に金属-半導体遷移を起こし、それに伴い可視光域での光透過率が変化することがわかった。これらの光学的性質の変化を伴う水素化・脱水素化に関する研究は始まったばかりであり、全体像は明かではない。そこでLa薄膜膜の水素吸収・放出過程について実験を行った。 La膜はスパッタ法を用いて石英ガラス基板上に作製した。3000〜5000ÅのYの上に200ÅのPdを蒸着させた。膜は他の容器に移して真空引きした後、水素ガス中で水素化した。その過程の電気抵抗測定も行った。水素化した膜の加熱による脱水素の様子も調べた。 水素化に伴い、不透明膜から橙色の半透明膜になるのが観察された。水素吸収後のX線回折から、長時間水素中に放置しても完全に三水素化物にならず、一部二水素化物が残ることがわかった。 水素吸収時の電気抵抗率の変化を調べると、初めに抵抗率は上昇し、次いで減少、最後に著しく増大した。これはα相からβ相、そしてγ相が析出するのに対応している。 次に水素化した膜を真空中に一日置いて脱水素化を試みた。X線回折から三水素化物のピークがみられ、脱水素もすぐには完了しないことがわかった。 このように、脱水素化は常温では非常に遅いことがわかった。そこで加熱させたときの脱水素化の様子を調べた。440℃で熱処理を行うと三水素化物が消失し、同時に酸化物が生成されることがわかった。さらにこの後、水素化処理を行った膜では三水素化物は生成しなかった。Pd保護層が役割を完全には果たさずに酸化物層が形成され、水素の拡散をブロッキングをしていると考えられる。
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