1.粘土LB膜を用いた研究成果 (1)インドールとTCNQをベースとしたD-π-A型分子内電荷移動(CT)化合物(ind-TCNQ)と粘土との複合LB膜 垂直浸積法、水平付着法の何れの方法で作製した試料からも、対称中心を持たない分子配列を取る薄膜試料に典型的な光第二高調波発生(SHG)挙動が観測された。従って、粘土LB方を用いれば、長鎖アルキル基を持たない発色団を対称中心を持たずに配列させられることを明らかとなった。次に、置換基の異なる種々のind-TCNQと粘土とのハイブリッドLB膜を作製し、そのSHG強度を比較してみた。電荷移動度の観点から理論的に予想される非線形光学応答の大小の序列はよりも寧ろ、アセトニトリル溶液に関して測定した吸収スペクトルの吸収ピーク波長が測定したSH光の波長に近いものほど大きな非線形光学応答を示していた。この事から、この系の非線形光学定数は、CT相互作用によってのみ支配されているのではなく、一般のπ-共役系有機化合物と同様、共鳴効果や振動子強度などの寄与を含めたトータルでのバランスによって決まっていることがわかった。 (2)金属錯体-粘土LB膜 CT化合物に加え、[Fe(phen)_3]^<2+>と粘土とのハイブリッドLB膜などの非線形光学定数も測定した。上記CT化合物の場合と同様、特別に大きい非線形光学応答は観測されなかった。 2.全反射法による非線形光学定数測定 カオリナイトに有機物をインターカレートした集積系や、種々の多核錯体の二次・三次非線形光学定数を測定したが、錯形成によるCTが必ずしも大きな非線形光学挙動を導きはしなかった。 3.結論 本研究を通じ、多くの錯体の非線形光学定数測定を行った。その結果、大きな非線形光学応答を呈する物質は、π-共役系化合物の場合と同様、振動子強度が大きい材料であるという傾向をつかめた。
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