ゲノム情報を利用した標的遺伝子群の単離法の確立を目指し、全ゲノム配列の明らかになっている線虫および酵母をモデル生物として、実験法の検討を行った。標的配列の効率的な単離のため、これまで用いていた転写因子の特異的抗体による精製に代わって、タグ付き遺伝子導入個体を作製し、そのタグを利用した標的配列の単離が可能であるかどうか検討した。さらに全ゲノムレベルでの単離を行うためゲノムDNAアレイを用いた標的配列同定法の検討も行った。 酵母ゲノムDNAアレイとしてaffymetrixの非翻訳領域を含むオリゴチップおよびORFチップを用いたが、両チップともHAタグを用いた精製DNAによってMATα2の標的遺伝子の特異的検出ができた。次に全ゲノム配列が明らかになっている多細胞生物である線虫で同様な解析を行うため以下の実験を行った。転写因子にタグを結合した遺伝子を導入したトランスジエニック個体において、導入遺伝子は線虫のミュータントフェノタイプをレスキューした。このことはタグ付き転写因子が正常蛋白と同様の標的遺伝子群の制御をしていることを示しており、タグを用いた標的配列の単離が可能であると考えられる。線虫は酵母と違い転写調節領域がかならずしもORF近傍(1kb内)に存在するするとは考えられないので、全ゲノムをスクリーニングするためには10万スポットのゲノムチップを作製する必要があるが、予備実験として1000スポットのゲノムチップを試作し、ゲノム中の標的配列を10倍以上濃縮できれば標的遺伝子を特定できることを確認した。
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