in situ RNAハイブリダイゼーションでは個々の神経の細胞体しか染色されないため、その細胞がどこに投射し、どのような情報処理を担う回路を形成しているのか、すぐには同定できない。しかし膨大なGAL4エンハンサートラップ系統コレクションから、in situ染色像と対応する領域で発現を示すものを検索し、二重染色で比較対照すれば、in situで検出された細胞の厳密な同定と、その細胞が作る回路網の詳細な解析が可能になると考えられる。そこで、二重染色をホールマウント脳標本において安定して行なえるような実験系の開発を行なった。in situ染色を効率よく、かつ感度良く実施するために幾つもの染色プロトコルを比較検討した結果、NBT/BCIPを用いた染色法が最も確実な結果が得られた。また、GAL4エンハンサートラップ系統を用いて強制発現させるレポーターのタンパクの存在を、プロテアーゼ分解処理を伴うin situ染色を施した標本において検出するために、様々なレポーターと検出法の組み合わせを試した結果、クラゲ蛍光色素GFPを発現させ、抗GFP抗体でラベルしてCy3蛍光色素で検出する方法が、最も高感度で高精細な像を得られることが分かった。この成果を用いて、神経伝達物質GABAの産生酵素遺伝子を発現する細胞をin situ染色でラベルし、GAL4エンハンサートラップ系統との二重染色で実際に細胞を同定し、その遺伝子を発現する細胞と発現しない細胞との間の神経線維の投射形態比較が可能なことを実証した。
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