植物における光シグナル伝達物質の分子的実体の解明を目的に、光シグナル伝達を仲介するプロテインキナーゼの検索と同定を行った。またフィトクロームシグナル伝達のセカンドメッセンジャーであるcGMPの役割を解明するためcGMPによって発現が調節される遺伝子を検索した。 ダイズ光独立栄養培養細胞(SB-P細胞)の可溶性画分に、光依存的な一過的チロシンリン酸化を受けて活性化する46kDaセリン/スレオニンプロテインキナーゼを検出し、LAPK(light-signal activated protein kinase)と名付けた。LAPKの活性化/不活性化機構や、基質特異性を検討し、LAPKがMAPキナーゼ様プロテインキナーゼであることを示した。また、LAPKの光による活性化は活性酸素等による二次的な影響ではないと考えられた。LAPKの精製を試み、各種クロマトグラフィーによりインゲルアッセイでプロテインキナーゼとしては単一のバンドにまで精製した。今後、本酵素の精製と部分構造解析、cDNAクローニング、さらに遺伝学的手法による機能解析を進める。 一方、PCRサブトラクション法により、ダイズSB-P細胞よりcGMPによって発現が調節される遺伝子のcDNAクローンを複数種得た。発現が上昇する遺伝子としてフラボノイド系ファイトアレキシン合成系酵素やrepetitive proline rich protein等を得た。一方、発現が減少する遺伝子の一つとしてCDPK cDNA断片を得、これをプローブとしてダイズcDNAライブラリーより全長cDNAクローン(CDPK-B)を得た。さらにCDPK-B遺伝子を単離し、約1.2kbのプロモーターの塩基配列を決定した。プロモーター中には光抑制に関与するシスエレメント(RE-3)のコア配列(TGGG配列)およびエンドウpra2に報告されたDE1エレメントに類似の配列(GGATTTTA/T)が存在していた。今後、これらの配列を中心に光およびcGMPによる発現抑制に関わるシス配列とこれに結合する転写因子の解析を進める。
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