研究概要 |
1.タバコNiRの4番目の遺伝子(nii4)のcDNAかクローン化:タバコにはroot-type,leaf-typeのNiR遺伝子が各2個ずつあるが、これまでに3個しかクローン化されていなかった。本研究でroot-typeのnii4遺伝子のcDNAとゲノムDNAの一部のクローン化・塩基配列を決定した。 2.コハク酸アンモニウムを窒素源として成育させたclone271および野生株から切り取り葉を調整し、重窒素ラベルした20mM硝酸カリウムで8時間処理した後、常法によりケールダール分解、質量分析計により還元態窒素量を定量した。切り取り葉を用いた分析から、野生株とclone271の硝酸還元能は実験誤差内で一致した。従って、clone271植物で観察された硝酸由来の還元窒素は地下部(根)で作られたものではなく、地上部(葉)で作られたものと結論された。 3.コハク酸アンモニウムを窒素源として成育させたタバコclone271および野生株植物から葉を採取、ホモジナイズして粗抽出液を調製した。この粗抽出液をNativeゲルを用いて二次元電気泳動した後、ゲルを亜硝酸還元酵素活性について活性染色(MVおよび亜硝酸イオンを電子供与体および電子受容体とする)を行った。その結果、野生株において、濃い2つのスポットと薄い複数のスポットが観察された。 4.未知窒素(UN)化合物の発見:植物を一定条件で栽培するとケールダール還元窒素や無機窒素以外の未知窒素化合物が生成することを見出した。 5.以上の結果は、「NiR以外に亜硝酸をアンモニアに還元する酵素活性がある」との考えを完全に否定するものではない。NiR活性染色で得られた合計4個以上のNiR酵素活性スポットのアミノ酸配列の決定、タンパク質の同定は、「NiR酵素活性を持つタンパク質」の実態を解明する上で、必須の研究課題である。
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