気孔孔辺細胞はカビ毒フシコクシンを添加されると、細胞膜H^+-ATPaseが非可逆的に活性化され、気孔が開いたままになり、葉の枯死を引き起こす。一方、生理的シグナルである青色光によって細胞膜H^+-ATPaseが活性化される場合その反応は可逆的で、青色光の刺激がなくなると気孔を閉鎖させる。今までの研究から青色光による細胞膜H^+-ATPaseの活性化がリン酸化を介して引き起こされる事が解明されていたが、フシコクシンの作用機構については特にリン酸化の関与を巡って議論がわかれていた。これらの事に関して研究を行い以下の成果を得た。 フシコクシンにより細胞膜H^+-ATPaseがリン酸化され、そのリン酸化レベルとH^+-ATPaseの活性が良く一致した。また、リン酸化の部位やアミノ酸は青色光によってリン酸化されるものとほぼ完全に一致した。この事実は細胞膜H^+-ATPaseの活性化機構は青色光とフシコクシンの両者で同一である事を示している。また、フシコクシンによる細胞膜H^+-ATPaseのリン酸化反応はプロテインキナーゼ阻害剤、K-252aにより阻害されなかった。一方、青色光による細胞膜H^+-ATPaseのリン酸化はほぼ完全に阻害された。また、フシコクシン添加の場合、細胞膜H^+-ATPaseのリン酸化反応によって14-3-3タンパク質が結合するが、この結合が不可逆的であった。以上の研究によってフシコクシンの作用はリン酸化の進行は青色光の場合と全く同じであるが、一旦、14-3-3タンパク質が結合するとこの結合が非常に強くて、活性化状態が保たれると考えられる。
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