眼・鼻・耳などの感覚器は、プラコードと呼ばれる肥厚化表皮外胚葉から形成される。本研究では、感覚器プラコード形成機構の分子基盤解明を目的に、感覚器プラコード特異的に発現するSix3及びSix4の遺伝子発現機構とその産物の転写因子としての生理機能の解析を行なった。 Six3をゼブラフィッシュ胚で過剰発現させると眼が肥大する。Six3は転写抑制化因子Enと類似した蛋白質領域をもつことから、転写抑制化因子として機能すると予想された。実際に、強制的に転写活性化型にした変異Six3の過剰発現を行ったところ、眼縮小という野生型とは逆の表現型が観察された。Enは転写コリプレッサーGrouchoとの結合により転写抑制能を発揮するので、GrouchoとSix3の相互作用を調べるためにゼブラフィッシュGroucho遺伝子を単離した。酵母two-hybidと免疫沈降解析の結果、GrouchoとSix3は結合することが明らかとなり、また、この相互作用が喪失した変異Six3構築では眼肥大化能が消失することがわかった。以上の結果から、眼形成過程においてSix3は転写抑制化因子として機能することが明らかとなった。 次にゼブラフィッシュSix3及びSix4遺伝子の上流領域を単離し、GFP遺伝子を接続したレポーター構築を作製した。この構築をゼブラフィッシュ初期胚に注入すると、それぞれ眼プラコード及び鼻・耳プラコードに特異的なGFP発光が観察された。この結果は、単離した遺伝子領域に感覚器プラコード特異的な発現を規定する遺伝子配列が含まれていることを示す。今後は、これらの配列を同定し、感覚器プラコード形成を決定する因子の解明を目指す。一方、この解析過程で鼻・耳プラコード特異的なGFP発光を示すトランスジェニックゼブラフィッシュを系統化したので、当該系統を利用してプラコードから感覚器への形成過程を詳細に調べる予定である。
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