内部臓器の左右非対称性が逆転するマウスの変異体(inv)の原因遺伝子は1062個のアミノ酸をコードし、15個の繰り返しのアンキリン・ドメインを持つ。しかしながら、inv遺伝子は以前には報告のない遺伝子であり、その左右決定機構における役割は全く不明である。また、inv遺伝子がマウス以外の他の種で同様の機能を持つかも不明である。 マウスinv遺伝子産物は核移行シグナルを持ち、核で作用している可能性が考えられた。しかしながら、inv遺伝子を培養細胞ヘトランスフェクッションしても、inv蛋白は細胞質に局在する。この核移行の制御機構として次の2つの機構が考えられた。1)核移行シグナルが機能していない。2)核移行が阻害されている。inv蛋白の核移行シグナルが機能するか否かを知るためにGFP(green fluorescent protein)とinv蛋白の核移行シグナルの部分を融合したコンストラクトを培養細胞にトランスフェクトした結果、シグナルは核に移行し、核移行シグナルは機能していることがわかった。さらに、様々なN-末のアンキリン・ドメインの欠失株を作成したところ、アンキリン・ドメインを除去すると核移行することからアンキリン・ドメインは核移行を阻害していることが考えられた。さらに、アンキリン・ドメインとSV40の核移行シグナルを融合させたところ、SV40の核移行も阻害されたことから、inv蛋白のアンキリン・ドメインは核移行阻害に作用していることが明らかとなった。
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