トリのHSF3は熱ショック応答に必須であり、刺激により二量体から三量体へと転換する。高効率で相同組み替えが起こるニワトリBリンパ球系細胞株DT40を用いて、HSF3の遺伝子破壊を行いHSF3欠損細胞を作成した。その細胞に一連の欠損変異株を再導入した安定発現細胞を作成し、温熱ストレスを与えた前後の変異HSF3のオリゴマー構造を調べた。この生理的な条件下でのアッセイにより以下のことが明らかになった。(1)全長HSF3の二量体から三量体への正しい転換には分子サイズ20kDaの共有結合による翻訳後修飾が必要である。(2)議論の余地が残されていたカルボキシル末端側のロイシンジッパー様ドメインは、非ストレス下で活性型の三量体への移行を抑制することが決定付けられた。(3)活性型の三量体への転換に必須の領域を2カ所同定した。一つはDNA結合ドメインの一部であり、もう一つは核移行シグナル(NLS)と推測される部位であった。(4)NLSと推測される領域が確かにHSF3の核移行シグナルとして働くこと、さらにアミノ酸の部位特異的置換により核移行のみでなく活性型の三量体形成も妨げられることを明らかにした。
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