研究課題
cut遺伝子の機械刺激受容器前駆細胞の発現に十分なcis制御領域は、転写開始点から-30kbに存在する2.8kbのゲノム領域(A3)に存在していることが報告されている。今年度はこのA3領域をより細分化し、cut遺伝子の発現に必要十分な細小ゲノム断片を同定することを目標とした。A3領域を細分化してlacZレポーターと融合させたDNAコンストラクトを構築し、遺伝子組換えショウジョウバエの作成を行い、cut遺伝子の発現に十分なcis調節領域を狭めることを試みた。その結果、cut遺伝子の発現にはA3領域内の127bpのゲノム断片で十分であることが明かとなった。この127bp内には上流因子の一つと考えているbHLH型転写因子の結合配列であるE-boxが2ケ所存在した。一方、127bpゲノム断片内の3'側端の28bpを削ったコンストラクトは、E-boxを削らないにも関わらず、機械刺激受容器前駆細胞における発現に十分ではなかった。そこでこの28bpにbHLH型転写因子とは異なる上流因子が作用する可能性を考えた。28bpを3領域に分割し、それぞれに塩基置換を施したDNAコンストラクトを持った遺伝子組換えショウジョウバエを作成し、この28bp内の必要な塩基配列を明らかにした。その結果、127bpの内、3'端の19bpの塩基配列が必要であることが明かとなった。poxn遺伝子の発現制御領域の解析は過去に報告がないため、poxn遺伝子の転写開始点の周辺を中心にして化学刺激受容器前駆細胞に特異的に発現させるためのcis調節領域の同定を行った。poxn遺伝子の全exonを含む16kbのゲノム領域をクローニングし、それを細分化したレポーターコンストラクトを作成した。遺伝子組換え動物を作成し、cis調節領域の活性をin vivoで検討した。その結果、転写開始点より上流4.2kbのゲノム領域に化学刺激受容器前駆細胞を含むすべてのpoxn発現細胞においてレポーター遺伝子の発現を確認した。転写開始点上流1.7kbおよび1.5kbのレポーターコンストラクトでは十分な活性を得る事ができなかった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)