研究概要 |
Mesp1,Mesp2遺伝子は同一染色体上に近接して存在しており、その発現も発現量は異なるものの、両者とも、発生初期の中胚葉及び体節形成過程に同様なパターンで発現している。さらにこれらの遺伝子は相補的に働くため、単独のノックアウトマウスでは、その機能解析が困難になっている。特に、体節過程におけるこれらの遺伝子の機能を正確に解析するためには、両者が体節形成過程のみで、失われるマウスの作成が望まれる。そこで、もし、これらの遺伝子が共通のエンハンサーを使用していたならば、エンハンサー特異的なノックアウトマウスを作成することにより、目的とするマウスが得られる可能性がある。そこでまずMesp1,Mesp2のエンハンサーの解析を行った。その結果それぞれの遺伝子が別々のエンハンサーをもっていることが明らかになった。そこでこのエンハンサーに結合する因子を同定することができれば、上流の制御因子の解析の足がかりとなることが期待される。Mesp2の上流に同定した、体節特異的エンハンサーは初期に全く活性をもっていないことが明らかになったので、こちらのコアエンハンサーを同定し、そこに結合する上流の因子が共通である可能性が考えられる。そこでMesp2の上流のコアエンハンサーの解析を進めている。またMesp2の発現及びその後の発現領域の変化(後半部での抑制)が体節の前後極性の形成に決定的な役割を果たすことを我々はすでに示している。これに関して興味深い知見が得られている。Mesp2遺伝子の上流約0.8kを含むDNA断片をエンハンサーとしてもちいた場合には、内在性の遺伝子と全く同様に体節の前半部に局在した発現パターンを再現した。ところが、エンハンサーを185bpにまで削ると、その発現が体節全体に広がり、後半部での抑制がかからないことが判明した。すなわち、Mesp2の上流には、遺伝子の活性化に必要な配列とその発現を体節の前半部に局在させるために、後半部における発現を押さえる配列が分かれて存在することが明らかになった。さらに、Mesp2ノックアウトマウスではMesp2遺伝子の発現の開始に異常はないものの、その停止が正常におこらず、その発現が前方方向に広がる。すなわち、Mesp2それ自身が負の制御を行っていることも明らかになった。
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