研究概要 |
塩基配列特異的な基質RNAの切断を実現するためには,基質に特定の立体構造を形成させることが重要である.昨年度の本特定領域に基づく研究により「RNA-DNA二本鎖中のターゲットRNA部位のみを一本鎖とした状態で,フリーのランタニド金属イオンを添加する」という方法が非常に有効であることを見出した.本年度はこれを発展させ,RNAの目的部位のみを特異的に活性化し,この位置でRNAを配列特異的に切断する手法の開発を目指した.まず,インターカレーターの一つであるアクリジン分子を末端に導入した修飾DNAを合成し,目的位置のみが一本鎖になるようにBNAと二本鎖を形成させた.非修飾DNAを用いた場合と同様にランタニドイオンを系中に加えて切断を行うと,非修飾DNAを使用した時と比べて30倍以上の切断活性の向上が見られた.その速度は,これまでに報告されたRNAの配列特異的切断の研究の中でも一,二を争う速さであり,生理条件下ではおよそ1日で反応が完結した.また,反応が進行した段階においても,切断の塩基配列特異性は保たれていた.さらに,アクリジンによって活性化されたRNAは,単独ではRNA切断活性の低い亜鉛イオンやその他遷移金属イオンなどを用いても,塩基配列特異的に切断された. また,切断の位置選択性の向上とアクリジン修飾DNAの再利用とを期待して,DNA鎖の中央部位にアクリジンを導入した修飾DNAについても同様の検討を行った.このような認識配列部位の中央部分にアクリジンを導入した系においても,効率的なRNAの配列特異的切断が実現した.
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