本研究では、RNA-ペプチド間の形の相補性に基づいた配列情報の伝達が可能ではないかと考え、ペプチド鋳型上での特定のRNA配列の会合・縮合反応を試みた。モデル反応構築の枠組みとして、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)RevタンパクのRNA結合ドメインに相当する短いペプチド(Revペプチド)、および、Revの結合相手であるRev-responsive element(RRE)との複合体を用いた。また、Revペプチドよりも強くRREと結合する人工ペプチド(RSG-1.2)について検討した。 まず、RREをいくつかの特定の位置で切断した形のRNA断片を調製し、ゲル・シフト法によりこれらのRNA断片のRevおよびRSG-1.2との複合体形成を調べたところ、RSG-1.2の場合のみその形成が確認できた。そこで、RSG-1.2ペプチド存在下でのRNA断片の縮合反応を化学縮合剤EDACを用いて行ったところ、期待されたペプチドによる縮合反応の促進は見られなかった。次に、二つのRNA断片を繋ぎ止めているステム領域の相補性を無くすことにより、ペプチドが存在しない時の反応の効率が著しく低下し、その結果、反応の特異性(ペプチドの有無における反応の効率の割合)が向上した。 現在、より大きなペプチドによる縮合反応の促進効果が見られるよう、基質のデザインの改良を行っている。具体的には、ダンベル型RREをステム領域を残した形で、2ケ所で切断した基質の縮合反応について検討している。また、牛免疫不全症ウイルス(BIV)TARRNAとBIV Tatペプチドとの複合体をモデルとした反応についても検討している。さらに、RNA上のどの位置でのカップリングが可能であるか明らかにするため、circular permutation analysisを行ない、ペプチドとの結合に影響しないRNA上の切断位置を解析している。
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