神経特異的に発現する新規スプライシング因子であるNSSR1および2は単一の遺伝子から選択的スプライシングの結果二種の産物が生成する。今年度はNSSR遺伝子の機能を明らかにするため、遺伝子破壊マウスの作成を試みた。まず、第一エクソンを含む約16kbのNSSRゲノム遺伝子を単離し、制限酵素マップを作成した。マップに基づき、第一エクソンとその周辺をNeoカセットと組み換えるターゲティングベクターを構築した。ターゲティングベクターをエレクト由ポレーション法によってES細胞に導入し、遺伝子が組み換えられた細胞を選択した。組み換えES細胞をブラストサイトにマイクロインジェクションすることによってマウスを創生した。これまで、二回試みそれぞれ90%および80%のキメラを得たが残念ながら一カ月程度で死亡してしまったため、遺伝子破壊マウスの作成には至っていない。現在、3回目のインジェクションを行っている。 一方、神経でのスプライシング機構におけるNSSR遺伝子の役割を明らかにするため、NSSR1あるいは2に結合するタンパク質の検索を行う必要がある。結合タンパク質の検索は通常、酵母ツーハイブリッドシステムを利用するが、我々は基質となるRNA存在下でのみNSSRに結合するタンパク質を検索するため、スリーハイブリッドシステムによる遺伝子スクリーニングを試みた。これは、基質となるミニジーンを酵母に導入し、基質存在下でツーハイブリッドを行うものである。システムの準備を完了し、現在はスクリーニングを開始したばかりであるが、幾つかのポジティブクローンを得ており、今後の解析が待たれる。
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